“命守りたい”夫婦の思い 共感呼ぶ 新潟発 みんなのデモができるまで
七月一三日、新潟市で集団的自衛権行使容認に反対するデモがありました。参加者がみんなでつくる市民のデモは、若者やパパ・ママ が参加し、地元でも話題になりました。仕掛け人の夫婦は実は民医連職員。ツイッターなどで呼びかけ、当初の予想をはるかに上回る一〇〇人の参加が。地域包 括支援センター巻の大嶋陽さん(社会福祉士)と新潟勤医協の伊達弓恵さん夫妻を取材しました。(田口大喜記者)
きっかけは集団的自衛権行使容認の閣議決定の前夜、六月三〇日の官邸前の抗議行動でした。陽さんは新潟から駆けつけ、人々が埋め尽くす光景を見て、「新潟でもできることはないか? この危機的状況で行動しなければ後悔することになる」と考えたのです。
妻の弓恵さんは今年一月に第一子の咲紀葉ちゃんを出産し、平和やいのちの問題を強く意識するようになっていました。育児に追われる最中、集団的自衛権行 使容認の話を聞きびっくりしました。「産まれるときはみんな命懸け。そんな大切ないのちが戦場で死ぬなんて考えられません」と話します。デモ主催はもちろ ん初めて。
まず陽さんがツイッターでデモの呼びかけをしてみたところ「やりましょう」と反応してくれた人が一人あり、始動しました。自分たち夫婦と子ども、知人、 四人が歩くデモでもいい、と二人は考えていました。ところが、ツイッターで参加の呼びかけを続け、駅頭でのチラシ配りなどを行ったところ、地元新聞にも取 り上げられることに。「ビラを配ってもいいですか?」と声がかかるなど、たくさんの協力者が名乗りを上げました。気付けば「みんなのデモを応援する」とい うツイッターアカウントまでできていました。
警察へのデモ申請など具体的な準備は夫婦二人で行いましたが、「ツイッターなどで拡散してくれた人みんなが主催者」と陽さん。
■「飛び入りOK」に次々
デモ当日は雨が降ったにも関わらず、出発時点で六〇人の参加者が。陽さんも弓恵さんも知らない顔ばかりで驚きました。新潟駅周辺の繁華街一・六kmのコースを四〇分かけて歩きました。
音楽が趣味の陽さんは、このデモのために和太鼓を購入。陽さんが奏でる和太鼓の軽快なリズムに合わせて「命を守れ!」「人を殺すな!」と思い思いのコー ル。街の注目を集め、写真を撮る人や手を振ってくれる人がいました。太鼓には、「めっちゃリズミカル!」とツイッターで女子高生から感想がありました。 「飛び入り参加OK」のプラカードを掲げていたところ、カップルや子ども連れが次々と加わってくれました。
「ゴール地点に近くなるころには、列が長くなっていてビックリしました」と弓恵さん。
終わってみれば参加者は一〇〇人を超えていました。二〇人のデモ申請だったので、警備の警察官は三人。「これ以上参加者を増やさないで!」「飛び入り参 加OKのプラカードを降ろして!」との指示が出る程でした。ツイッターでの反響も「やってよかった!」「ぜひまた歩きましょう!」。
■未来のために
「一回きりと考えたデモでした。しかし、戦争をする安倍政権に怒り、平和を求める志を同じ くする人がこんなにも多いことに気付かされ、またやります」と陽さん。デモの名称も「Twitter発 集団的自衛権に反対する『みんなのデモ』~未来の ためのピースウォーク~」になりました。
新潟は保守的なイメージが強い部分もあります。しかし、新潟・柏崎刈羽原発や巻原発の反対運動など活動は盛ん。今回のことも、集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行した安倍政権に怒った人たちが動きました。
「個人的には、安倍政権を打倒するだけではダメだと思っています。根本からしっかりした政府をつくる必要があります。今回のような運動を重ねる中で、私 たちみんなが賢くなっていくことが重要です。デモに参加しない人にも意識してもらいたいですね」。
次回は九月二八日に新潟駅発で予定しています。地元の大学生たちがとりくんでいるピースウォークと合同で、三〇〇人の参加を目指しています。「いのち守れ」の声と和太鼓の音がまた新潟に響きます。
(民医連新聞 第1579号 2014年9月1日)