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民医連新聞

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戦争反対 いのちから守る現場から 花の谷クリニック 伊藤真美 院長 投票に行かなかった私が アベ NO THANK YOU!

 集団的自衛権行使容認の閣議決定や秘密保護法制定、原発再稼働推進、社会保障大改悪…。とどまることを知らない安倍政権の暴走に、医療者も声をあげています。一回目はホスピスのある診療所「花の谷クリニック」院長の伊藤真美さんです。(新井健治記者)

 実は数年前まで投票に行ったことがありませんでした。「選挙に行かなくても日常には影響がない。日本はまじめな国民にささえられた平和で豊かな国」と信 じていました。そんな私が安倍政権の誕生で変わりました。「このままでは戦争が起きるかもしれない」と本気で焦っています。
 今年四月、医療・介護総合法をはじめ社会保障制度の大改悪に抗議し、五〇〇〇人で国会を包囲した「ヒューマンチェーン」の呼びかけ人になりました。
 その時にご一緒した方たちと、政権にNOを突きつける「アベ NO THANK YOU!」の行動を六月に始めました。ストレートに「安倍政権打倒デモ」でも構わないのですが、社会活動の経験がない人たちも参加しやすいようにしたかっ た。シュプレヒコールでなく、歌を歌いながら銀座をパレードしました。
 今月二二日に二度目の銀座パレードをします。私自身が政治に無関心だったからこそ、多様な人をつなぐ役割を果たせるのではないか、と思っています。

問題の大本に目を

 病院の専門分化した緩和医療ではなく、生活の延長線上にある緩和医療を実践したくて開業しました。日本のホスピスケアの黎明期からかかわってきた医師として、命を軽んじる政治には声をあげる責任がある。
 医療は患者の暮らしをささえるものです。“普通”の感覚を大事にしてきた医師から見て、今の政治はおかしい。着々と戦争ができる国づくりをすすめる一方 で、貧しいために必要な医療や介護を控える患者さんが増えています。
 憲法や原発、経済格差など、あらゆる問題の大本に安倍政権がある。国民の命より、経済や国家を優先する思想を、私は「アベ的なるもの」と名付けました。
 普通の感覚を持っていれば、アベ的なるものへの違和感を覚えるはずです。アベ NO THANK YOU! の行動は、この違和感に多くの人が気付いてほしいと始めたのです。

楽しく、 身軽に参加

 昨年九月、診療所の敷地内に「スープのよろずや花」をオープンしました。「花」には、私の三つの思いを込めました。
 一つめはスープです。緩和ケアを通じて終末期の患者にとって食の問題が大きいと分かり、嚥下障害があっても飲めるおいしいスープを作りたいと思いまし た。二つめは送迎など、介護保険外のよろずサービスを提供する仕組み。三つめが戦争と原発、死刑制度のない社会を実現する、との願いです。アベ NO THANK YOU! は、「花」の活動の延長です。
 最近、疑問に思います。安倍政権はおかしいが、支持する国民も少なくない。国民の中に「アベ的なるもの」に同調する意識がある。生活への不安や不満を弱 者や外国人に向けたり、経済さえ豊かになれば後は顧みないという意識です。
 この構造から自由になり、自身の生活感覚で物事を判断することが求められています。だから、若者に期待しています。楽しく身軽に、政治に参加できる新しい運動体を作りたい。

命育む社会を

 「政治的な活動をすると“色眼鏡”で見られるのではないか」と心配する人もいるでしょう。でも若者を見ていると、時代は確実に変わってきたと思います。真剣に生き方を模索し、今までとは別の形で社会に参加している。また、ひところより“政治”への抵抗も減っています。
 数年前にノルウェーの介護施設を見学しました。この国の人々は「意見を言えば社会が変わる」と確信していました。「何をやっても変わらない」と言う人に 「いっしょに声をあげようよ」と呼びかけたい。命を大切に育む社会をつくるため「アベ的なるもの」には退場してもらいましょう。

花の谷クリニック 1995年、千葉県南房総市に開設。14床。がん末期の患者の入院やショートステイ、一般内科外来、デイサービス、デイケア、在宅医療を展開。職員数35人(医師2人)。ヒマラヤ山中にある「花の谷」が診療所名の由来


アベ NO THANK YOU!
8月22日、午後1時半から日比谷図書文化館(東京・日比谷公園内)でシンポジウム、午後3時半から銀座パレードに出発。参加者はワッペン(写真・カンパで購入)を付けて行動。全国各地の発起人も募集中
http://abenothankyou.wordpress.com/

(民医連新聞 第1578号 2014年8月18日)