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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 通所施設での整容 広島・協同診療所デイサービスひまわり メイクで生活が活性化 利用者同士の関係も変化

 年を重ねても、美しくありたい、身だしなみに気をつかいたいもの。広島・協同診療所「デイサービスひまわり」では、利用者へのメ イクを実施しています。介護度が高く、活動にも消極的だった利用者が、メイクをきっかけにイキイキとし、活動参加も増えるなど、生活全般を活性化する効果 が現れています。

 デイサービスでメイクを始めたのは五年前。午前中は健康チェックや体操、入浴で慌ただしく 過ぎますが、自由時間もある午後を利用して、月に四~五回程度、一回三~五人にメイクをしています。メイクにかける時間は一人一〇分程度。顔面マッサージ から始まり、口紅の色など利用者本人の好みを聞きながら行います。
 職場にはエステサロンで働いた経験のある職員がおり、顔面マッサージや年配の人向けのメイク方法などを同僚に伝授。
 はじめは恥ずかしがっている女性の利用者も、メイクを施してゆくと嬉しい顔になってきます。鏡を見ながら「なかなかべっぴんさんじゃないの」と自画自賛 したり、周りの人が「きれいね~」と声をかけたり、華やいだ雰囲気が広がります。
 普段から気むずかしい利用者が、ほかの利用者と言い争いになり、険悪なムードになったことがありました。さりげなくメイクに誘うとその場の雰囲気が和ら ぎ、その利用者もメイクの後は気分良く過ごすことができた、といったエピソードも。
 利用者の家族からも、「デイサービスから帰ってきても、とても機嫌が良かった」と好評です。

Aさんを変えたメイク

 糖尿病と脳梗塞後遺症があるAさん(女性)は要介護5。車いすで、一〇年前から通所してい ます。二〇一二年六月には仙骨部の褥瘡が悪化し、デイサービスに来ても、痛みからベッドに横になり、体操などの活動や食事を拒否することも増えました。同 年九月、ベッドで休んでいたときにメイクに誘うと応じ、気分良く終了。鏡を見て笑顔も見せました。
 その後、褥瘡の改善とともに、メイクの誘いに応じることも増えてきました。痛みを訴えて活動に参加しないことも少なくありませんでしたが、メイク中やメ イク後は「痛い」「寝かしてほしい」とは一切言わず、ゲームや体操などの活動にも参加しました。男性職員が褒めると「誘惑しなさんな」と冗談を言ったり、 「福屋(デパート)に行きたいなぁ」と希望を口にすることも。またメイクを楽しみにしている様子も見せ、「今日は特別にきれいにしてちょうだいね」と注文 することもありました。
 家族から「お母さん、きれいね」と褒められたと、嬉しそうに報告してくれたこともありました。

1対1の時間がとれる

 メイクの時間には、思わぬ効果もありました。それは、普段はなかなかとれない、職員と利用者の「1対1」の時間がとれることです。
 一〇分程度ですが、利用者が家族の話、昔の思い出など、なかなか聞くことのできなかった話を、ぽつりぽつりと話してくれます。メイクをしながら、「きれ いになったら、どこに行きましょうか? 誰をデートに誘いましょうか?」などとも話します。実現はしなくても、照れくさそうに笑ったり、はしゃいだ気分に なります。利用者が、こんな夢を持っていたんだと気づかされることもあります。
 科長の大久保珠美さんは、「1対1で向き合う時間を作ることで、利用者さんは“受け入れられている”という安心感が持てるようです。職員も利用者さんの理解がすすんでいます」と話します。
 また、普段は控えめな利用者が、メイクの後は「どう? きれいになった?」とアピールしたり、周りの利用者も「すてきだね」「私もやってもらおう」と一 緒に喜び合う様子も見られるようになりました。大久保さんは、「デイサービスの利用者さん同士の関係も作られ、集団として変化してきたと感じています」と 話しています。


〈メイクの中身〉

1.化粧水
2.下地
3.ファンデーション
4.眉
5.チーク
6.口紅

*気をつけること*
・片麻痺のある人は、眉が下がりすぎないようにする
・高齢者のメイクは、眉を上げすぎないこと、チークは頬(ほお)の正面ではなく、頬の外側、頬骨にのせる感じで

(民医連新聞 第1577号 2014年8月4日)