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民医連新聞

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リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(8) 文・杉山貴士 同性愛の歴史社会学から〈1〉

 同性愛は歴史的にどのように位置づけられ、今に至っているのでしょうか。
 以前お話ししたように、性は権力によってさまざまに操作され、位置づけられてきました。同性愛などの性的少数者は、時の権力者等によって、宗教や精神医学を根拠に劣位に置かれたり、排除を正統化されてきました。
 同性愛は、社会でどう見られてきたか。その歴史を概観すれば、(1)「変わり者」→(2)「罪」「異常性欲・性的倒錯」→(3)「人権」へと変遷してき たと考えられます。『キリスト教と同性愛』によると、14世紀まではゲイピープルは特に問題とされず「変わり者」でした。それが宗教観によって「罪」意識 が植え付けられ、近代科学が興隆すると、精神医学によって「性的倒錯」となりました。Homosexualityは19世紀にハンガリーの医師が名づけた 病名です。
 日本でも江戸時代までは「男色」は趣味のひとつ、という程度の認識でした。明治初期の文明開化でドイツから精神医学が入ってきて、「異常性欲」「性的倒 錯」とされるようになりました。例えば、明治初期の軍医としても有名な森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』の中の逸話からは、そうした変化が理解できます。
 第一次世界大戦後のドイツでは、同性愛者を「第三の性」として擁護しようとする「科学的人道委員会」などの動きもありました。しかし、ナチスが台頭する と、ユダヤ人などとともに同性愛者も大量虐殺の対象となりました。同性愛者を示すピンクの三角形を腕に付けられ、ガス室送りにされたのです。収容所に送ら れた同性愛者の名誉回復や補償には、戦後も、かなりの時間を要しました。
 同性愛が人権の問題として考えられるようになったのは、当事者たちの社会への抵抗、人権確立運動によるところが大きいでしょう。
 同性愛者はそれまで、他者によって自分を定義づけられ、自らの「人間としての権利」を主張できませんでした。そのような当事者たちが、どのように運動を すすめ、「語られる立場」から「語る立場」へと変化したのでしょうか。
 次回は人権確立運動について考えます。


すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

(民医連新聞 第1576号 2014年7月21日)