だから安保はいらない (6)繰り返される米兵犯罪 殺人、性犯罪など21万件
安保条約第六条(基地の許与)に基づく「日米地位協定」(一九六〇年締結)は、米軍と米兵にさまざまな特権を与え、いかなる場合にも米軍の権利が 優先する不平等協定です。旧安保条約発効(五二年)以降の米兵と軍属の犯罪は二一万件以上にもなりますが、その多くは罪に問われていません。日本はまるで 米国の植民地です。
日米地位協定は公務中の米兵が罪を犯しても、日本側が裁くことはできない取り決めです。公務中でなくても、日本の警察に逮捕される前に基地内に逃げ込ん でしまえば、捜査権は及ばず逮捕が非常に難しくなります。たとえ米兵を逮捕しても、ほとんどの事件で日本側が裁判権を放棄する“密約”が日米間で交わされ ています。
一九九五年、沖縄で米兵三人による女子小学生暴行事件が起きました。米軍は基地内で容疑者を逮捕しましたが、地位協定を盾に身柄の引き渡しを拒否。「戦 後五〇年も経つのに、なぜ暴行事件が繰り返されるのか」と沖縄県民の怒りは頂点に達し、八万五〇〇〇人の総決起集会を開きました。
県民の抗議を受け、日米両政府は殺人、性的暴行に限り、日本側が容疑者の身柄引き渡しを要請した場合は、米側は「好意的考慮を払う」と運用改善を合意。 しかし、その後も米側は引き渡しを拒否しています。事件が起きるたび、米軍は深夜外出禁止、飲酒禁止など綱紀粛正をアピールしますが、米兵の凶悪犯罪は後 を断たず、何の効力もありません。
背景に地域協定と密約
警察庁の資料によれば、一九九六~二〇一二年に米兵、軍属が日本国内で犯した凶悪犯罪(殺人、性的暴行、強盗、放火)の容疑者一二九人のうち、約半数の六二人を警察が身柄を拘束(逮捕)しないまま処理しました。性的暴行では四一人のうち九人しか逮捕していません(グラフ)。
法務省検察統計(〇一~〇八年)でも、米兵の公務執行妨害、文書偽造、脅迫、詐欺、恐喝、横領などの起訴率はゼロで、全く罪に問われていません。一方、 日本人の凶悪犯罪容疑者は九割以上が逮捕。米兵犯罪がいかに野放しにされているか一目瞭然です。
背景にあるのは、在日米軍の特権を定めた日米地位協定と裁判権を放棄した密約です。日米両政府は一九五三年、地位協定の前身「日米行政協定」(五二年締 結)を改定、公務外では日本側に第一次裁判権があるとしました。
ところが、表向きの交渉とは別に、日本側代表は「著しく重要な事件以外について、第一次裁判権を行使しない」と米政府と秘密裏に約束しました。六〇年前の密約は今も有効なのです。
(安保破棄中央実行委員会)
(民医連新聞 第1574号 2014年6月16日)
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