相談室日誌 連載371 疑問残る「その場しのぎ」の支援 辰巳徳子(大阪)
九〇代のAさんはB市で生活保護を受給しています。親族はおらず、借地持家に独居し、ケアマネジャーの支援と、ヘルパーの訪問によって要介護5でも何とか在宅での生活を続けていました。
ところが、認知症の進行に伴い、徐々に寝たきりに。当院に入院される前は、用意された食事をかろうじて口にするという状況でした。入院は肺炎を発症され たためです。入院中に嚥下障害がみられるようになり、痰の吸引も必要になりました。そこで、ケアマネジャーや生活保護担当者など、Aさんを支援する関係者 でその後の療養について話し合いました。痰吸引など医療処置を伴うサービスが日常的に必要になったAさんを在宅サービスの範囲ではささえきれない、という 結論が出ました。
療養先を検討することとなりましたが、施設入所は痰の吸引が壁になりました。ですが療養型病院では医療費以外の費用が発生します。入院期間が半年を超え たAさんに給付される生活保護の日用品費は約二万円。また、自宅の問題もありました。「借地」の契約解除は「更地にした上で」行うことが条件。しかし契約 解除などの実務をAさんに行える力はなく、保護費で支給されなくなった地代を自力で払い続けることとなり、療養型病院の費用を捻出する余裕はありませんで した。
B市の生活保護担当者へ成年後見人の申し立ての相談をしましたが、担当者は「急を要しない」「次の療養先で金銭管理をしてもらえるなら必要ない」などの 理由で、受け付けませんでした。一方、もう住むことのない自宅の借地代については「家を処分しなければ払い続けるしかない」といいます。解決策の提案もな いまま、平行線をたどりました。
そこで私たちはAさんの身体障害者手帳を申請。重度障害が認められたので、生活保護の加算が付き、ご本人の金銭管理も引き受けてくれる療養型病院に転院 することができました。居場所は見つかりましたが、借地代の不利益な契約は残ったままです。その場しのぎでよしとする、B市の姿勢に疑問が残っています。
(民医連新聞 第1573号 2014年6月2日)