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民医連新聞

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安倍「教育再生」ねらいは― 戦争に行く“人材づくり” 全教・長尾副委員長に聞く

 安倍政権は現場から「戦争できる国」づくりをすすめています。「安倍政権による“教育の支配”は許さない」と、三月二九日には東 京都内で「安倍『教育再生』ストップ集会」が行われました。全日本教職員組合副委員長の長尾ゆりさん(高校社会科教諭)に聞きました。(丸山聡子記者)

国のための「人材」作り

安倍晋三氏は二〇一二年九月に自民党総裁に選ばれるやいなや、「自民党教育再生実行本部」を立ち上げました。本部長は文部科学大臣の下村博文氏。 同年一二月に首相に返り咲くと、首相直属の「教育再生実行会議」を官邸内に設置。自民党の「教育再生実行本部」がまとめたものを、官邸の「教育再生実行会 議」が次々と提言にして発表し、「教育再生」をすすめようとしています。
安倍政権は「戦争放棄」を定めた九条を変え、日本を「戦争する国」にしようとしています。それとセットで「教育再生」をすすめ、「戦争する国」に役立つ人間を育てる狙いです。
一方で「日本を世界でもっとも企業が活動しやすい国」にすることをめざしています。そのためには、企業に従うモノ言わぬ労働者が必要です。

教科書への介入

日本高等学校教職員組合(日高教)が二〇一二年に行った「高校生一万人憲法意識調査」では、九条を「変えない方がよい」と答えた高校生は六三%。 徴兵制には七二・五%が「反対」、非核三原則は「堅持すべき」と答えた人が八二・九%でした。このままでは「戦争する国」は実現できません。安倍政権はこ こを変えるため、教科書への介入を強めています。
文部科学省は教科書の検定基準を変え、「通説がないものは強調するな」「政府の見解に基づいた記述にせよ」としました。南京大虐殺や従軍慰安婦の記述を制限し、竹島・尖閣列島は「日本固有の領土」だと明記せよ、ということになってしまいます。

道徳の“教科化”

道徳は現在、正規の「教科」ではない「特別活動」です。戦前、軍国主義教育に使われた「修身」につなげないためです。しかし昨年一二月、文科省の有識者会議は学校の「道徳の時間」を「教科」にするよう提言。「教科」になれば検定教科書の使用や成績の評価が求められます。
文科省の副教材「私たちの道徳」(ホームページからダウンロード可)は小学一、二年で「ふるさとに親しみを」と求め、三、四年で「きょうどを愛する心」、五、六年では「郷土や国を愛する心」を求めています。こうした内容が教科書になりかねません。
生まれ育ったふるさとを大事に思う気持ちはそれぞれの心の中にあります。しかしそれは、成績として「評価」されたり、強制されるものではありません。

エリート校に予算増額

四月には、小学六年生と中学三年生を対象に全国一斉学力テストが行われました。今回から、文科省は、市町村別や学校別の結果公表も可能としました。
順位を上げるために小学五年から過去問題やドリル学習に時間が割かれ、生徒から「先生、授業をして」と悲鳴が上がる、成績のおもわしくない生徒の親が「学力テストの日は休ませます」と申し出るなどの弊害が各地で起きています。
安倍政権は予算も差別化しています。毎年の教育全国署名により少人数学級を推進する予算がついていましたが、安倍政権では「少人数学級」の言葉は消え、予算も消滅。一方でエリート校には一校で年間一六〇〇万円の予算がつきました。
ほんの一握りのエリート以外、多くの子どもたちは「自分には価値がない」と受け止めかねません。

教育委員会制度の改悪

このような様々な改悪を国や首長の思い通りにすすめるために「教育委員会改悪法」案が出されています。教育委員会は、戦前のような「お国のための教育」にならないように、政治から独立した機構になっています。改悪してはなりません。

憲法の持つ大切な力

いま、自分の言葉で好きな条文や理由をカードに書き、交流する「I LOVE 憲法」運動にとりくんでいます。ある中学生は「二五条」と書きまし た。カードには「死にたいと思ったことがあります。でも二五条を学び、前を向いて生きていこうと思えました」と綴られていました。
この運動を通じて、憲法がこの国にある大切さを痛感しています。一人ひとりの希望を奪う安倍「教育再生」は許さない決意です。

(民医連新聞 第1571号 2014年5月5日)