■日常活動で指標を役立て医療の質がアップ■ 全日本民医連 QI推進事業報告会開く
全日本民医連QI推進事業二〇一三年報告会が三月二九日に東京で行われ、三一県連、六一事業所から一〇〇人が参加。初めて共同組 織全国連絡会の運営委員が出席しました。厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」評価会議の藤本晴枝さん(住民・患者代表)が講演しました。今後は 職員間にとどまらず、患者、住民とQIを共有し、ともに良質な医療を実現していくことを意識する場になりました。(新井健治記者)
QI(Quality Indicator・Improvement)とは「医療の質指 標・改善」のこと。民医連は独自に二七指標を設定、三年前から事業にとりくんでいます。集会では全日本民医連の羽田範彦次長が理事会あいさつ。二〇一四年 度の診療報酬改定で、データ提出加算の義務化や診療録体制加算1の新設、褥瘡対策の報告、在宅復帰率導入など、急性期から慢性期まで医療の質を問う改定が 行われており、「ベースとなるQI活動の前進を」と呼びかけました。
民医連のQI事業は、二〇一一年度から三年連続で医療の質の評価・公表等推進事業に採択されました。昨年度の事業は、厚労省からも「非常に優れたとりく み」と高く評価されています。羽田次長は「三年間の到達に確信を持つとともに、これからの三年間が大事。QIを日常の医療活動の改善に結びつけることが今 後の課題」と総括しました。
職員の“物語”が知りたい
講演した藤本さんはNPO法人「地域医療を育てる会」の理事長。千葉県東金市を中心に、住 民と医療者が協力して地域医療を守っていこうと活動しています。“コンビニ受診”の問題点を啓発する絵本を発行したり、県立東金病院(三月で閉院)と協働 してレジデントのコミュニケーションスキル研修を実施しました。
藤本さんは民医連のQI事業について、患者満足度アンケートの指標を例に解説。「態度や言葉遣いはどうですか」など抽象的な設問もあり、「結果を踏まえ て何を改善したいのか、目標を明確にして事業にとりくむべき」と指摘しました。
また、多くの病院がホームページ上で公表しているQIのデータについて「文字とグラフだけで、医療関係者向けの情報発信にとどまっている。患者や住民は 指標の改善にとりくむ職員の“物語”が知りたい」と話しました。
QIで病床利用率が安定
QI事業の参加病院は三年前の六〇カ所から七四、八二と年々増え、日常の医療活動で指標を活用する事業所も出てきました。実践例として、集会で秩父生協病院(埼玉)、宮崎生協病院、水島協同病院(岡山)が報告しました。
秩父生協病院は療養病棟におけるQIについて、看護長の新井さとみさんが報告。同病棟は肺炎新規発生率、褥瘡発生率など三三指標を設定、各指標の入力担 当者を決め、毎月のフロア会議で数値を報告、改善方法を話し合いました。
その結果、本人・家族参加型カンファレンス実施率が八割に向上するなど各指標で目標を達成できました。病床利用率を毎月意識することで安定した病床コン トロールができ、例年は特定の時期に落ち込んでいた利用率を改善する効果もありました。
指標に設定した「栄養マネジメント加算入所日算定率」の向上を図るため、独自に「入院説明手続き順シート」(表)を作成。シートの活用で栄養士の説明に 対する患者満足度が向上しました。また、「口腔機能維持管理体制加算」の算定要件を満たすため、歯科医師の指示内容を病棟に掲示するようになるなど、QI で医療活動の改善がすすんだとりくみを報告しました。
(民医連新聞 第1571号 2014年5月5日)