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民医連新聞

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リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(3) 文・杉山貴士 「私たちの問題」としてゲイを考える

「等身大のゲイ」や同性愛者人権確立運動という社会運動との出会いは、ゲイとしての自分を大いに励ましました。大学では「教育の中での同性愛」に ついて調べ、研究会にも参加するようになりました。しかし、大学卒業後、どんな社会人になれるのかは大きな悩みでした。普段はノンケ生活(※1)をして、 週末に本当の自分に戻るしかないのか? ロールモデルがいない中、どう歳をとるのか…。ゲイの知り合いが就職して運動から外れ、疎遠になると、その不安は さらに大きくなりました。当時、実際に働き、仕事と家庭を持って生活しているゲイの先輩たちの姿は見えませんでしたし、運動家仲間に、そういう人はほとん どいなかったのです。
私は苦学しながらの学生期間が長く、社会人として「異性愛社会」(※2)にかかわることを避けてきました。「ゲイへの差別が強いから職場や地域ではカム アウト(カミングアウトの略)できない。それは社会が悪いのだ」というメッセージしか発信できていなかったと思います。
民医連に就職し、職場の仲間や上司とのかかわりで実感したのは、「仕事(役割)を通じた人間的つながりの大切さ」です。要は「ゲイだからではなく、その 人だから」。実際の私は、ゲイだけでは生きていないのですから。
異性愛社会とのかかわりを、地域や職場を通じたつながりの中で捉える必要性を、最近強く感じます。異性愛社会で、ゲイが働き、自分らしい生活をすること は難しい。カムアウトしている当事者の多くは、組織や地域に属さずに生活できる基盤をめざそうとします。
「ゲイの権利ありき」だけでは同性のパートナーを持った人たち向けの福利厚生は広がらないでしょう。仲間の「その人らしさ」をどう職場で育み、活かして いくのか。いかに「私たちの問題」として考えられるか。差別・被差別ではなく「働く仲間」の「その人らしさ」をいかに大切にできるかが必要なのだと感じる ようになりました。

※1ノンケ生活…ノンケとは「そのケ(同性愛指向)がない」の意味。ノンケ生活とは異性愛者のふりをして生活することで、彼女を作ってみせるなど。
※2異性愛社会…男女のペア(一対)が「普通」とされる社会。結婚制度など福利厚生も異性愛が基準。異性愛中心社会ともいう。


すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

(民医連新聞 第1571号 2014年5月5日)