学ぼう!総会方針 (2)平和活動 「いのちと健康、破壊する戦争はNO!」 仲間たちのアクション
全日本民医連が今後二年間の活動方針を提起した四一回総会のスローガンのひとつめが「平和憲法のもと、戦争しない国の歴史を守り 抜き、新しい福祉国家を展望する国内外の運動をつなぐ架け橋となろう」です。民医連は平和活動に積極的にとりくんでいますが、自衛隊が海外で武力行使でき るようになる集団的自衛権の容認、憲法改悪の手続き法・国民投票法改正案など、日本を「戦争できる国」にしようという動きがあるいま、平和活動はますます 重要です。各地のとりくみを紹介します。(木下直子記者)
民医連の活動の土台である民医連綱領は「人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対 し、核兵器をなくし、平和と環境を守ります」という項目を掲げています。平和活動は生命をなにより大切にする医療・介護の専門職集団として、また敗戦直後 の日本で「貧しい人に医療を」と結成した医療団体として、こだわり続けている「伝統」でもあります。
全日本民医連が企画しているのは、平和活動交流集会、平和学校、沖縄・辺野古への支援連帯行動などです。
ほぼすべての県連が平和に関する委員会を設置、平和にかかわる活動方針を立てたり、法人や事業所での活動交流やニュース発行、職員が平和について学ぶ場 (学校・セミナー)をつくる、原爆被爆者援護・連帯などが任務です(二〇一二年三月、全日本民医連反核平和委員会調べ)。
■次世代に伝える
終戦から七〇年近く経ち、戦争体験者が減ってゆく中、若い世代に歴史を伝えようというとり くみが行われています。事業所が支援してきた地元の基地騒音訴訟について学んだり(石川)、「平和ガイド」を養成する(沖縄)など、地域色のある平和教育 も。青年職員を主な対象にした「平和学校」などの講座は、二九県連が開催。その数は年々増え、最近では広島や千葉、東京が始め、法人単位でとりくんでいる ところもあります。
「フィールドワークを交えたり、受講者がテーマを考えるなど、内容や運営を工夫した講座が多いです」と、全日本民医連反核平和委員会担当の上田楓事務局員。
例えば「受講生で実行委員会をつくり、学習テーマを話し合ってとりくんでいる。米軍ヘリが落ちた沖縄国際大学への訪問、地元の人たちへの聞き取りを実 施」(山梨)「加害の歴史を知ろうと、韓国まで行って従軍慰安婦の話を聞いている」(京都)など。また、多くが受講生たちが学んだことを報告する場を設け ています。
■多岐にわたる活動、名物も
実際の活動は―。広島・長崎で八月に開かれる原水爆禁止世界大会への代表派遣や、大会をめ ざして行う平和大行進への参加、核廃絶の署名集め、「平和まつり」など年間行事のほか、平和サークルや「九条の会」などのグループもできています。「九条 の会」は法人・事業所・職場・地域などを合わせ四二八を数えます。
そして、民医連名物となりつつあるのが、平和をアピールして走る「自転車平和リレー」や「ピースラン」。これは、北海道民医連・道東勤医協の青年職員が 一九九四年に始め、全国に広がりました。全日本民医連が六〇周年を迎えた昨年は記念事業として呼びかけ、史上最多の四一県連がエントリー、日本列島を走り ました(奈良は今月二九日走行予定)。
【民医連と平和を学べる素材】
◆動画「いのちの現場から平和をめざして」(二〇一〇年制作)…全日本民医連のホームページトップの「学習・宣伝、署名用紙など」の項目をクリックし開いたページ右下から視聴できます。
◆『被爆者の思いを胸に』(かもがわ出版)…原爆症認定集団訴訟に立ち上がった被爆者と一緒にたたかった民医連医師たちの記録 注文‥保健医療研究所FAX〇三(五八四二)五六五七
全日本民医連のとりくみ
◆辺野古支援・連帯行動…沖縄・名護市辺野古沖に計画されている米軍基地移設に反対する住民たちに連帯して行っています。沖縄国際大学に米軍機が墜落した 2004年8月の2カ月後に開始。若手からベテランまで参加し、31次まで続いています。辺野古の海には「平和丸」という小舟(左)も停泊中
◆平和学校…学習会や討論、フィールドなどを3クール。並行して勤労者通信大学(労働者教育協会)の「憲法コース」をテキスト学習。学校では教えないが、 日本人として必要な知識を学べ、全国の仲間と交流できるのも魅力。写真は40期に開いた学校の卒業式の様子
◆平和活動交流集会…文字通り全国の平和活動を交流します。2年に1度の開催。交流だけでなく、学ぶ場にも
『はだしのゲン』プロジェクト 道東勤医協
原爆の悲惨さを描いた漫画『はだしのゲン』を多くの人に読んでもらおうと、釧路協立病院と協立すこやかクリニックは募金で同書を購入。待合室などに閲覧コーナーを設けました。
漫画の内容が不当に批判され、学校や図書館で自由に読むことができなくなる事態があいつぎました。そこで病院外来の川嶋真希子看護長をリーダーに、通称 「はだゲンプロジェクト」を設立。共同組織強化月間に合わせ昨年一〇月に募金を開始、わずか一カ月で目標額(三万五〇〇〇円)が集まりました。全一〇巻を 五セット買いそろえ、病院とクリニックの待合室、病棟の共有スペースに閲覧コーナーを設置し誰でも自由に読めるようにしています。
職員六八人のうち、はだしのゲンの漫画や映画を見たことがある人は五四人でした。「小学校の図書館で読んだ」「ウジがわく場面を覚えている。怖くて最後 まで読めなかった」などの感想が。大人になって読み返したらどんな感想を持つのだろう? そんな興味もプロジェクトを後押ししました。
はだしのゲンは基本的人権や表現の自由、知る権利についても問題を投げかけます。作中、ゲンの父親は治安維持法違反で逮捕され拷問を受けました。同書を 図書館から閉め出そうとの動きがあった年に、特定秘密保護法が成立したのは偶然でしょうか。
子ども時代は「先生からすすめられた」「怖いもの見たさ」「図書室にある唯一の漫画だから」などさまざまな理由で手に取ったはだしのゲン。今こそ、もう 一度読んでほしい。一〇巻まで読破すると、新たな発見があります。
(西山大輔、協立すこやかクリニック・事務)
(民医連新聞 第1570号 2014年4月21日)