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民医連新聞

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相談室日誌 連載367 高齢者の遠慮深さとつながりの希薄さが生む問題 長瀬誠司(長野)

Aさん(80代女性)と義妹が当センターに相談に来たのは昨年の一二月でした。二人は前日に反貧困ネットが開いた「きずな村」を訪れ、そこからの紹介で来所されました。
 お話を伺うと、Aさんは夫の死後、長男家族と同居していましたが、長男が他界して以降、長男の妻から暴力を受けるように。身の危険を感じたAさんは甥のもとに逃げ込みました。
 その後、Aさんは甥の家の敷地内にある小屋に八年間住みました。八畳ほどの部屋には所々すき間があり、ガスや電気は甥の家から引いていましたが、節約の ため極力使わず、暗い中で生活していました。水道はなく、炊事や洗濯は川で、トイレは畑や徒歩一五分程の公共施設を使っていました。
 年金は月二万五〇〇〇円程、貯金を崩しながらなんとか過ごしていました。高齢のAさんが過酷な環境での生活を強いられ、限界にきていることを伺い、安心 できる生活の場を探すこととなりました。支援の結果、現在は軽費老人ホームに入居し、穏やかに暮らせています。
 Aさんは「甥や親戚、皆さんに迷惑をかけたくない」と何度も訴えました。その遠慮のために、屋外や公衆トイレで用を足し、お風呂も甥が声をかけるまで入らないという状態でした。
 今回のケースは「人に迷惑をかけたくない」という高齢者に多くみられる遠慮深さと、地域・親族間の関係の希薄さや人権に対する感覚の弱さが、根底にある と感じました。SOSを出せない人はそのまま放置される現実があります。問題を自分で抱え込み、小さな困り事が時間の経過とともに大きな問題へ発展し、最 終的に孤立死に至ることもあります。
 人と人、人と地域のつながりが希薄になっている社会で、ささいなことでも相談できる関係づくりが必要だと感じています。支援者側も受身ではなく、「夜電 気がついていない」「ライフラインが止まっている」「公共料金の滞納が続いている」などといったSOSサインをいち早く掴み、訪問による確認や行政への発 信から支援へつないでいくシステム作りが必要だと思いました。

(民医連新聞 第1569号 2014年4月7日)