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民医連新聞

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発達障害に目を向けて 大分県医療生協

 脳の機能的な問題で学習やコミュニケーションなどに困難が起きる発達障害。近年その存在は知られるようになりましたが、診断や支 援体制、社会的な理解はまだまだこれからです。大分県医療生協では発達障害の診断や支援、早期療育の施設も運営し、発達障害児を受け持った学校教員の相談 にものっています。「発達障害児の支援は民医連の得意分野ではないか」と小児科医の酒井誠医師は語ります。とりくみを取材しました。(矢作史考記者)

 同法人の大分健生病院では毎週金曜日の午後に発達特診の時間を設け、発達障害児の診療を行っています。
 酒井医師は、子どもに物の数を質問したり、じゃんけんをして、認知機能やコミュニケーション能力を確認します。臨床心理士が、心理検査や知能検査、家族の聞きとりなど行い、社会生活能力を検査、それらを元に医師が診断します。
 発達障害と診断された子どもには、医師、臨床心理士、言語聴覚士(ST)らでつくるチームが支援します。集団行動が難しい子どもに対してはSCT(ソー シャル・コミュニケーション・トレーニング)を。三~四人で課題やゲームなどを行う中で社会性を身につけます。また、楽しむことも大事にし、みんなで料理 をする「キッズキッチン」も開いています。
 毎週水曜日には医師とST、臨床心理士がカンファレンスを開き、子どもの学校での様子や学習のすすみ具合などを見ながら、必要な支援を検討していきます。

早期療育で二次障害防ぐ

 「発達障害で問題なのは二次障害です」と臨床心理士の武内綾子さんは指摘します。
 二次障害とは、本来抱えている困難さの上に、周囲からその特性が理解されずにストレスをため、情緒不安定になったり、問題行動を起こすこと。早期に発見し、早期療育をすることで二次障害も防ぐことができ、発達障害の特性も目立たなくなることがあります。
 その二次障害を防ぐ役割を担うのが、同法人の子育て・療育支援センター「きらり」です。一日の通所は三~六時間。登録児童は二七人で、二歳~就学前の子 どもを対象に一日一二人まで受け入れる小規模の通園施設です。利用児童の八割に発達障害があり、早期から発達支援、保護者支援を行っています。
 「きらり」では子どもを単独で預からず、親子で通園し、「育てにくさ」を抱える子どもの関わり方や育て方を、保育士やOTが親といっしょに考えていきま す。園長の池田純子さん(心理士)は「時間をかけて当事者や保護者が障害を受けいれることが大事」と話します。「『きらり』に通所して親が子どもを理解す る構えができ、親同士もつながります。悩んでいる親たちが子どもの成長を喜べるようになることが嬉しい」。

教員へも心を寄せる

 教育現場への支援も。発達特診で支援が必要だと判断した時には、担当教員に学校でも子どもの特性に配慮するよう連絡します。「子どもが家庭から出 たとき、一番大きな存在が学校の先生です。先生たちを理解者にすれば、子どもは良い方向に向かっていくと思います」と酒井医師。
 また、教員に対しても共感的な態度で接しています。「相談に来る先生は自分に責任を感じていることも少なくありません。だから『あなたは間違っていませんよ』と、まず肯定しています。相談に来る親も教員も、誰一人手を抜いている人はいないんです」。
 「一人で悩むと負のスパイラルに陥ります。医師に励まされると、教員も自信を持てるのだと思います。教員が元気になって子どもを誉められるようになれば、子どもたちも学校生活が楽しくなります」と、酒井医師は語ります。

民医連が得意な「気づき」で

 発達障害は不登校や、家族の機能不全、貧困へとつながるケースも少なくありません。酒井医師はだからこそ、発達障害の支援は民医連の得意分野になる、と強調します。
 「民医連は『全人的な医療』と、患者の生活まで見通す『気づき』が武器です。民医連でも、発達障害を持つ人にもっと支援の目を向けてほしい」。

(民医連新聞 第1569号 2014年4月7日)