藤末衛会長のあいさつ 戦争しない国の誓い守りぬき新しい福祉国家めざす
戦争をしない国の誓いと歴史を守りぬき、新しい福祉国家と各事業所の展望を民医連らしさにこだわって創造する二年間の方針を本総会で討議し決定します。
安倍暴走内閣と、平和と民主主義・人権を切望する国民が激突する情勢です。民医連の大きな責任を自覚し、国民的共同の架け橋となる決意を固めましょう。
基地移設反対の稲嶺名護市長の再選を、二〇〇八年の辺野古支援連帯活動中に亡くなった束原進元副会長の墓前に報告します。また四〇期中亡くなった職員の皆さんに哀悼を表します。
代議員の皆さん
昨年は全日本民医連創立六〇周年でした。方針案第一章は、六〇年の歩みを振り返り、今後の決意を示す章です。須田朱八郎初代会長の言葉を引用しました。 社会疫学で明らかになった健康の社会的決定要因論や労働や環境を含めた健康権、そして自己決定を核とする患者の権利論や医療倫理など、今日では世界標準と して推奨される考え方が六〇年代に民医連で先取り的に論じられていたことには、驚きに近い感動があります。
医療技術は発展しましたが、その商品化・市場化を許さず「人権としての医療・介護」を地域で充実させる実践、連携、研究が私たちに求められています。そ してこれらを担う職員確保と養成を同時にすすめることが次の発展の鍵です。
代議員の皆さん
理事会は「人権としての医療・介護保障実現のための提言」を発表しました。地域での共同や対話に活用して下さい。特徴の第一は、医療・介護現場の実態、 特に「手遅れ死亡」「医療・介護相談と無低診事業の分析」「歯科酷書」など、医療・介護にアクセスが厳しい人々の実態に基づく提言であること。「原則とし て国民皆保険制度を守る」との政府の認識は現実をみておらず、すでに国民皆保険は形骸化している、と指摘し具体的提案をしました。
第二の特徴は、財政のつじつま合わせや費用削減優先の制度改革でなく、医療・介護を基本的人権とする日本国憲法の立場で提案したこと。医療・介護事業提 供者の非営利性を担保し、財源は保険料と税の応能負担、必要十分な現物給付で、利用時負担は極力低額とする。公的社会保険制度と公的扶助を組み合わせた、 社会保障の名にふさわしい改革です。
第三の特徴は、地域密着型の医療・介護実践の経験と「予防に勝る治療なし」の観点を重視し、保健・医療・介護ネットワークの形成とそれを担う人の確保と 養成を提案したこと。少子超高齢社会や疾病構造に対応できる医療従事者の研鑽、関連団体の努力や協調、協力を重視しました。医療の質向上や事故対応、原発 事故被害者問題にも言及しました。
第四の特徴は、生存権・健康権保障のため「健康の社会的決定要因」の克服をめざす政策の立案と実施を求める提案である点です。各種データをみても日本は 「産みづらく生きづらい国」で、この打開には分野を超えた提案が必要です。
第五の特徴は、改革の財源。まず所得再分配を強める税制改革と応能負担原則による社会保険料確保、次に内需拡大、地域経済の発展と賃金アップを求めてい ます。タックスヘイブンや法人税問題は、国際的規制や協調の努力を求めました。
代議員の皆さん
現政権は日本を戦争できる国にすべく、重大な解釈改憲に走ろうと、国会で議論を始めました。また、社会保障を個人の自立を強要する道具にする、憲法にも 関連法にもない解釈をしようとしています。多数を頼み、立憲主義も三権分立も無視する戦後初の暴挙です。しかもその内容は、将来にわたり国民の希望とは相 容れません。あの大日本帝国憲法ですら創設の精神を「天皇の権利を制限し国民の権利を保護する」としています。安倍内閣の異常さ、危険性は際立っていま す。第五章冒頭、政権の暴走を阻止し、新しい福祉国家を展望した運動と事業を確実に前進させるため、四つの重点課題を提起しました。
総会スローガンの「新しい時代」と「民医連らしさ」の文言について、議論があると聞いています。「新しい時代」とは(1)少子高齢化、人口減で社会構造 も疾病構造も大きく変化すること、(2)医療技術の画期的な前進、(3)途上国だけでなく先進国でも広がる社会格差と健康問題に、WHOを中心に健康権実 現のプログラムが提案されていることなどを反映した表現です。
政府は費用抑制を主題に、医療・介護提供体制や資格制度の抜本的変更を提案しています。これに対し、人権としての医療・介護を真摯に実践し、その担い手 を育てる意味で「民医連らしさ」へのこだわりを明記しスローガンとしました。また、これまで民医連の特徴を「憲法実現の運動体」で「非営利・共同の事業 体」と表現してきましたが、「人間的な発達ができる組織」を加えました。自己責任を強調し人を孤立させ、モノのように扱う新自由主義的人間観に対抗し、私 たちの運動が精神的にも豊かになるよう願いました。
六〇年の歴史に確信を持ち、奮闘しましょう。
(民医連新聞 第1568号 2014年3月17日)