フォーカス 私たちの実践 甲状腺エコー研修会 関東・北関東地協検査部門 経験少ない甲状腺エコー 有用な検査情報を提供したい
一月一三日、検査技師たちが甲状腺エコー研修会を開きました。関東・北関東地協検査部門委員会が主催し五三人が参加。関東甲信越検査連絡会議事務局・大澤和子さん(東京健生病院)の報告です。
研修会には、近畿や九州も含む一五県連から三二事業所五三人が参加しました。臨床検査技師が五一人、放射線技師が二人です。
「不安なく検査したい」と
きっかけは、昨年五月に開いた委員会。全日本民医連が福島県双葉町の委託を受けているエコー検診について話し合っていたところ、「研修会ができたらいいね」という意見が出ました。
原発事故のために県外に避難している福島県の被災者や、放射能汚染の健康影響を心配する親御さんからの要請は増えています。ところが、甲状腺エコーは、 心エコーや腹部エコーに比べると経験数が少なく、特に小児では経験がない技師が多いのです。
また、甲状腺エコーの研修会は少なく、甲状腺を専門にする医師もそう多くありません。「不安なく検査したい」という思いを、技師たちは持っていました。
講師は、立川相互病院(東京)の医師・住友秀孝さん(日本内分泌学会内分泌科専門医・指導医)と、福島県での甲状腺検診に長く関わっている甲府共立病院 (山梨)の技師・新津好江さん(超音波検査士)が引き受けてくれました。
当初は地協内事業所を対象に考えていましたが、全国検査部門委員会の協力も得て、全県に案内しました。
講義とライブデモで学ぶ
前半は新津さんが「福島の甲状腺エコー健診の経験と甲状腺エコーを実践するためのポイント」と題して講義を行いました。
新津さんは、福島県民健康調査での判定状況や広島・長崎の原爆、チェルノブイリ事故との比較、小児の成長過程でどう所見が現れるか、などについての情報を紹介しました。
そして「結節性疾患」と「びまん性疾患」の詳細については、多数の写真と資料で、甲状腺のエコー所見だけでなく、周辺臓器との関連、血液検査の意義など丁寧にふれました。
後半は、住友医師を講師にライブデモを実施。日立アロカ社からエコー機を借り、実際の描出法やプローブの操作法を学びました。
住友医師は、「必ず甲状腺の端から端まですべてを観察することが大事」と、説明しながら自身で会得されたという操作法を披露。また、所見があった場合、 次に何を見ればいいのか、頸動脈エコー検査の際もリンパ節を見ること、多くの経験を積む重要性などを話しました。
初めての試みで
地協が主催の研修会を開くのは、初めてのことでした。
準備のための臨時の会議も開き、企画の最終調整や会場の下見を行いました。当初は九月に予定していたものが悪天候で延期するというトラブルにも見舞わ れ、ようやく開催できました。準備から当日まで不安いっぱいでしたが、参加者からも「現場で生かせる内容だった」「先生の検査のコツはためになった」「今 後もこのような企画が必要」など非常に良い評価をもらうことができました。
これだけ多くの参加があり、あらためて甲状腺エコーの研修会を技師たちは求めていたのだと分かりました。私自身の実感でもありますが、対象が小児の場 合、検診を受け入れたくても自信がなく、なかなか応じられない悩みがありました。今回の研修会がスキルアップにつながれば、成功だと思います。
今後も継続するであろう福島原発事故避難者への甲状腺エコー、および日常での甲状腺エコーの実践に、今回の研修会が生かされ、有用な検査情報を提供していければと願っています。
(民医連新聞 第1565号 2014年2月3日)
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