歯科署名 集めた!!22万筆 「自己負担軽く」「保険で治療」はみんなの願い
全国の歯科職員たちが中心に集めた「保険で良い歯科医療を」の署名が約二二万筆になりました。二年前にとりくんだ同じ署名の約二 倍です。東京に次いで多く集めたのが兵庫民医連。患者や職員、共同組織とともに運動し、目標を大きく超える一万八六〇〇筆を集めました。同県連と協同歯科 (神戸医療生協)のとりくみを紹介します。(矢作史考記者)
断られない署名
「請願項目が分かりやすいですよ。お願いする側も説明しやすいし」と、協同歯科の藤原賢亮事務次長が実感を語ります。
今回の署名の請願項目は、
1、お金の心配をせず、歯科医療が受けられるよう、窓口負担割合を引き下げて下さい。
2、保険のきく歯科医療の範囲を広げて下さい。
の二項目です。「会計の後、患者さんに署名協力を訴えると、断る人はほとんどいなかった」。
県連でとりくんだ
署名運動を県連全体でとりくむよう工夫したことも、大きな推進力になりました。
昨年四月のスタート時、兵庫民医連は一万筆を目標にしました。二年前の前回の署名数は県連全体で六六〇〇筆。県連理事で協同歯科事務長の宮野由佳子さん は「今までと同じ集め方では目標達成は無理だと思った」と奮起。そこで県連一丸となって力が出せるよう、毎月「保険で良い歯科医療の実現を求める請願署名 推進ニュース」を発行し、各法人のとりくみの工夫や、運動のひろがりを知らせていきました。
宮野事務長も歯科がない法人に出向き「歯の状態と総医療費の関連を示すデータがいくつもある。これは歯科だけの問題ではない」と訴えました。すると、い たやどクリニックの六五五筆をはじめ、三つの訪問看護ステーションからも一〇〇筆、二〇〇筆と集めてきました。
今まで法人ごとで行っていた地域団体への署名協力も、七つの歯科事業所の所長が連名で呼びかけました。賛同した二五団体の中には、県の鍼灸師会など、今回初めて協力が得られた団体も。
「ほな、私も集めるわ」
患者さんの中には初めて署名に協力した人や、「ほな、一〇枚ほど持ち帰るわ!」と周りから集めてくれる人も出ました。患者さんの多くが医療費に関心が高いことも感じた藤原さん。「国会議員にはこの署名が患者さんの思いだと知ってほしい」と語ります。
生協組合員さんからも多く署名が寄せられました。宮野事務長は「学習が大きな力になった」と話します。神戸医療生協理事会の学習会では、協同歯科の石田 眞樹所長が講演。口腔内の状況が全身の健康に影響することや、保険範囲を広げること、健診の大切さを話しました。健康意識が高い組合員に響く内容で、署名 集めにもつながりました。
受診抑制なくし予防ケアを
四月から、消費税率八%、年金のさらなる引き下げ、前期高齢者の医療費負担の二割化などが 狙われています。石田所長は「歯科へのアクセスはハードルが高く、他の生活費を考えると受診が後回しになる」と、経済的な理由による受診抑制を心配しま す。「高齢者は歯科の健診や治療をすることで食べる能力を保てます。健康を維持すれば医療費も減ります」。
また、衛生士長の秋山初美さんも「健康で生活する権利を害する政策。税金を上げなくても財源はあるんじゃないでしょうか」と言います。「厚労省が推進す る八〇二〇(はちまるにまる)運動(八〇歳になっても自分の歯を二〇本以上保とうという運動)にも矛盾します」と指摘しました。
宮野事務長は今回の運動を通じてこんな風に考えています。「口は病気の入口です。歯科受診の費用負担を少なくして、気軽に歯科に受診できるようにしてほ しい。ケアをしながらおいしく食べて元気に暮らし、健康をつくることで医療費を減らす政策に転換してほしい」。
江原雅博全日本歯科部長の話
オール民医連でできた運動
今回の署名は多くの人に深刻な歯科の現状を知らせることが最大の意義だと思います。今回は歯科の空白県連からも多く寄せられ、オール民医連の運動にでき たと思います。保険外診療が許されている歯科で、保険診療の幅を広げる運動は、保険がきかない先進医療などが持ち込まれ始めている医科に対しても問題提起 になると考えます。今後も民医連の社保活動で、「必要な医療は国の責任で受けられるようにしてほしい」という国民の声を国会に届けていきましょう。
(民医連新聞 第1565号 2014年2月3日)