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民医連新聞

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相談室日誌 連載363 受診の機会奪う窓口対応に怒り― 渡邊郁(京都)

金曜日の午後五時過ぎ、六〇代男性のAさんから当院に電話が入りました。「一カ月ほど前から尿が出にくく、ここ数日は全身のむくみがひどい。保険証がなく貯金も底をついていて受診できない」と話しました。
 SWはすぐに受診するよう促し、区役所に保険加入や生活保護の相談を代理で行うことにしました。
 すぐ区役所に電話をし、事情を伝え交渉。生活保護課から「この電話で保護の申請意思を確認したとみなし、調査の上、本日からの保護開始も可能」という回答を得ました。
 しかし、国保窓口では、連休前の午後六時前であったにも関わらず、「来所相談が原則。電話での受付はできない。そもそも保険未加入者であり、窓口での申 請手続きや保険料支払いを行ってもらう必要がある」と繰り返しました。
 一刻も早くAさんを医療につなげたい、という思いを区役所と共有できないことに、怒りが湧いてきました。その後、「市の担当者とも相談し、対応してほしい」と念押ししました。
 Aさんは受診し、緊急入院となりました。そして翌週、国保課から「入院日に遡って国保への加入を認める」との連絡が入りました。
 Aさんは一〇年ほど前に不況の影響で自営業を辞め、保険料の捻出ができず国民健康保険に入っていませんでした。そのため、受診したくてもできず、区役所 に相談にも行けませんでした。頼れる親族もなく、月五万円程の年金と貯蓄を切り崩す生活で、生活保護の申請も考えました。しかし「世間の風潮」もあり、相 談に至らなかったそうです。
 今回は、Aさんが一〇年以上前ですが当院を受診したことがあったため、意を決して電話し、治療につながりました。しかし、相談の電話を当院より先に区役 所にかけていたら、「窓口申請が原則」という理不尽な理由で受診の機会を失っていた可能性があります。
 Aさんのケースは氷山の一角かもしれません。本来市民の身近な相談窓口であるべき役所が、受診抑制の一端になっていないか。今後、目を光らせねばならない、と感じた事例でした。

(民医連新聞 第1564号 2014年1月20日)

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