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民医連新聞

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ここにいてこそ希望が実現する 人間的発達をめざせる組織に 藤末会長新春インタビュー

 二〇一四年の展望を藤末衛会長から。この間の政治の動きを振り返るとともに、二月末の全日本民医連第四一回総会について語ります。(文・新井健治)

 特定秘密保護法に象徴されるように、昨年一年間の政治情勢はひと言でいえば「政府の暴走」と表現できそうです。数を力に憲法の基本原則を否定する悪法を次々と成立させました(表)
 しかし一方で、大きな変化も起きています。秘密保護法の強行に対して広範な国民が短期間で立ち上がり、国会前で声をあげました。脱原発・再稼働反対とい う普通の人々による抗議行動と地続きの動きです。おかしいと思うことには抗議するのが特別なことではなくなってきており、政府の暴走を止める力になると確 信しました。暴走は次の危機への恐れと焦りの結果です。

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人権と憲法に立ち戻って

 秘密保護法と同時期に、生活保護法の改悪と生活困窮者自立支援法が成立、社会保障プログラム法も成立しました。政府の「改革」は、「国の財政が大変なので、医療や福祉の後退は仕方ない」という、人権より経済に重きを置いたものです。
 さまざまな悪法は「大企業には国家保障を、国民には自己責任を」との考え方です。これに対抗する意味でも、社会保障を国家責任で実現するための「人権と しての医療・介護保障めざす民医連の提言」を理事会で決定しました。
 さて、昨年一一月、六〇周年記念事業でキューバ視察団に参加、医療と教育レベルの高さを改めて実感しました。同時に先進国の社会保障後退、特に日本の異 常さを再認識しました。同国の憲法五〇条と五一条には「医療と教育は無償」と明記されています。米国による経済封鎖で財政状況は厳しいですが、それでも医 療と教育は無料を続ける。日本政府がないがしろにする立憲主義が守られ、貫かれていました。
 全日本民医連は二年前の第四〇回総会で、「新しい福祉国家への展望を見出そう」と提案しました。福祉と平和が輝く“もうひとつの日本”を創ろうという呼びかけです。福祉国家の展望も依拠するのは日本国憲法です。
 また、社会保障、TPP、在日米軍基地、脱原発の四点で、国民に広がる運動の「架け橋になろう」と提案しましたが、一見バラバラにみえる四つが二年間の たたかいの中でつながってきました。いずれも、「人権と憲法」がキーワードで、沖縄や福島など誰かの犠牲によって成り立つ日本であってはならないというこ とです。人類の英知の到達点である憲法を敵視するものに未来はないと思います。

41回民医連総会を前に

 患者、利用者、職員にとっての情勢は決して楽ではありませんが、地道に民医連らしい医療・ 介護を実践し、学び連帯することで、人権と憲法が豊かに花開く日本に近づきたいと思います。秘密保護法は成立しましたが、廃案を求める運動がすぐに始まり ました。今月に名護市長選がある沖縄では、地元の自民党が辺野古の基地建設容認に転じたものの、県民世論は圧倒的に「基地は県外」で揺らいでいません。国 の針路を分ける激突の中で第四一回総会を迎えます。
 二〇一四年から二年間、私たちはどんな構えを持つべきか。四一期、改めて組織のあり方と発展を重視したい。医療と介護で基本的人権の実現を図るために も、職員と共同組織のみなさんの育ち合い、人間的な発達が意識され支援できる組織づくりにとりくみたいと思います。
 日々の実践が喜びになる組織をめざす。だれかの指示待ちという姿勢では、民医連に期待される役割を発揮するのは難しいでしょう。また、忙しい業務に流さ れたり、山積する課題に疲れ、燃え尽きてしまうことにもなります。
 医師をはじめ技術者は、技術の発展や新たな資格の創設に対し「自分は遅れをとっているのでは」との焦りもあるでしょう。技術獲得の要求に応えることは当 然であり、何のための、だれのための技術かを共に考えたい。同時に「実践の中で民医連や事業所に求められる使命を自覚でき、やりがいを感じることができ る」、そういう組織にしていくことが大切です。

疾病の“上流”を見る力

 「民医連でがんばってこそ、自分の希望が実現する」―。この確信を理屈だけでなく、心でもつかめる組織にするには、どうすればいいのでしょうか。
 ヒントになると思ったのは『命の格差は止められるか』(イチロー・カワチ著、小学館101新書)という本です。ハーバード大学教授で内科医のカワチ氏 は、日本の長寿の秘訣として和食や国民皆保険制度だけでなく、地域のささえあい(ソーシャルキャピタル)に注目しました。
 カワチ氏は、健康の社会的決定要因論に基づき、これを克服する展望を地域での住民の共同と政府、保健医療担当者の支援に見出しています。また、「人が集 まった時のパワーは、個人一人ひとりの力を足したもの以上になる」「他人を思いやる協調的な行動が地域全体や自分の財産になる」とも書いており、組織と個 人の関係についても重要な示唆があります。職員と共同組織のみなさんが、共に精神的に豊かになれる組織とは―。運動方針案の議論で深めましょう。
 また、患者・利用者が医療や介護にアクセスできない状況が広がっています。私たちが背景にある貧困や孤立に気づき、運動とともに自らの事業につなげられ るか。民医連綱領にある「無差別平等の医療と福祉」は、使命であるとともに事業発展の肝でもあります。貧困問題も戦略的に捉えたいと思います。
 たとえば無料低額診療事業は、困難を抱える患者さんを救えた実感を技術者だけでなくチーム全体がつかめるとりくみであるとともに、事業の拡大でもありま す。健康権保障のたたかいを自らの事業展望と重ねてすすめる年としましょう。

(民医連新聞 第1563号 2014年1月6日)