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民医連新聞

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ひとりひとりの尊重が社会の基本 デンマーク 医療・福祉・社会制度視察の旅

 デンマークは一九七六年に医療と福祉を一本化しました。日本がすすめている「地域包括ケア」のモデルと言われています。
 医療や福祉の事業の主体は国や自治体で、医療や介護の社会保険制度はなく、すべて税金で運営しています。医療や介護サービスの利用者負担はありません。 福祉関連予算は税収の六四%。消費税率は二五%。病院はレジオン(県)が、高齢者福祉はコムーネ(市)が担います。ガイドはこう説明しました。「福祉施策 は『ゆりかごから墓場まで』でなく『胎児から人生最期の日まで』です」。
 平均寿命は男性が七六歳、女性が八〇・五歳。日本ほどではありませんが高齢化も進行中です。経済成長率はマイナス〇・六%、失業率は七・六%。労働人口 が減ると税収が減り財政も厳しくなるため、高福祉をどう維持するか、国も模索を始めていました。

日本と共通する悩みも

 〇七年の行政組織再編を機に中小病院が廃止され、巨大病院中心の運営に転換。病院や病床数 が減り、がん治療も二~三カ月待ちに。満足できない人は民間病院を利用しますが、自由料金なので高額所得者しか使えません。身近な病院を残してほしいとい う声もあったようですが、あまり病院に行かない国民性のせいか、不満は大きくなっていないようです。平均在院日数も短縮し、在宅への促進が図られていま す。
 地域包括ケアの体制整備はコムーネの財政力に左右され、自治体格差も存在します。財政が厳しいため高齢者サービスの質を下げたコムーネもあります。介護 の人手不足の対応に介護ロボット(掃除機)などを導入したところも。六五歳から支給していた国民年金は、六七歳に延びることに。一方、国民年金以外に積立 年金や企業年金などの利用が増え、医療や家事援助への一部負担導入や病院民営化の意見も出始めています。

地域で過ごす高齢者は

 八七年に高齢者住宅法が改正され、ブライエボリー(二四時間サービス付き高齢者住宅)が新 設、「脱施設化」が示されましたが、今も高齢者施設(プライエム)は必要とされています。六〇年代からの核家族化で、病院を退院しても、そのままでは自宅 に帰れない人が増えています。長年住んだ自宅を売り、プライエムに入所したり、ブライエボリーに住み替える人も増えています。
 なお、サービス付き高齢者住宅は日本でも続々と建設されていますが、建設から運営まですべて民間まかせの日本とは違い、デンマークは土地・建物は行政が 提供し運営を民間に委託する形で高齢者の住まいを支援していました。
 施設や在宅など地域で過ごすすべての人たちのケアを担うのが、一万六〇〇〇人のホームドクターです。二四時間定期・巡回体制がとられています。ともに働 く看護師は二〇〇〇人で、行政職です。病院を退院後は、このホームドクターと看護師、さらにソーシャルヘルスアシスタントが、患者の施設や自宅を訪問し、 治療や看護・介護などにあたっています。

 財政難や働き手確保など、共通の課題も抱えていましたが、日本と決定的に違うのは個人の尊重が「社会の基本」ということでした。

(片倉博美、全日本民医連理事)


 日程…8月25日~9月1日
参加人数…16人
コース…病院や保育園、高齢者施設、高齢者住宅、介護職員養成校の見学や看護師の労働組合との懇談など

(民医連新聞 第1563号 2014年1月6日)