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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 排泄自立支援 東京・東葛病院回復期リハ 「自分でトイレに行きてぇな」 退院に向け排泄方法を工夫

 回復期リハビリテーション病棟では、退院後の生活を見据え、患者さんの状態や生活スタイルに合わせた介護指導や調整が不可欠で す。東葛病院(東京)回復期リハビリテーション病棟では、寝たきりだった重症患者のひと言をきっかけに、リハビリ職員やSWとも協力し、排泄支援にとりく みました。介護福祉士の佐々木春菜さんの報告です。

重度の寝たきりAさん

 Aさん(七〇代、男性)は、脳梗塞で倒れ、寝たきりの状態で回復期リハ病棟に入院しました。左片麻痺、嚥下障害、構音障害、注意障害があり、要介護5で、当初はほとんど動くことができませんでした。頻尿も重なり、ナースコールを頻繁に鳴らしました。
 リハビリがすすむなかで、少しずつ座れる程度に改善。「座れるなら、トイレにも挑戦しよう」と、スタッフから意見が出るようになりました。Aさんからも 「自分でトイレに行きてぇな」と表明がありました。排便だけでもトイレでできれば、在宅で介護する家族の負担は軽減されます。同居する妻(七〇代)と次女 からも、「自宅ではポータブルトイレを使いたい」との希望が出ました。

「出たよ!」が第一声に

 課題は、(1)腹圧をかけて排便できない、(2)退院後の排便方法、(3)回数が多い夜間の排尿に対応して、退院後の排尿方法をどうするか―などでした。
 便意はあってもうまく便を押し出せないことに対しては、水分摂取やウォシュレット刺激、腹部マッサージを実施しました。便座に座ったときに臀部の痛みを 訴えるため、リハスタッフに相談。入浴マットを切り抜いて便座クッションを作り、使うことにしました。
 その結果、臀部の痛みが軽減して座位も安定。安定して座れるようになると腹圧も出て、排便量も増えました。
 自力で排便できるようになると、Aさんは快活になりました。朝、出勤してきたスタッフに、「おはよう」より先に「今日、出たよ!」と嬉しそうに報告する ように。入院当初は、一日中寝間着で過ごしていましたが、朝のトイレが習慣化すると、起床後は着替えて車いすに乗る、という流れができ、生活リズムが出て きました。

家族の介護にも配慮して

 退院後はデイサービスを利用するため、通所中に排便のタイミングが合うよう、下剤を調整し ました。しばしば残便感を訴えるので摘便をしていましたが、退院後は訪問看護で摘便することにしました。自宅でポータブルトイレを使用するのは、妻のほか に次女かヘルパーなど複数の人手があるときに限定しました。
 もうひとつの懸案が、夜間の頻尿です。三〇分おきのこともあり、妻がすべて担うのは困難なため、長時間用パットの使用を提案、入院中から試行しました。 当初、Aさんからは長時間の使用への不安や不快感の訴えがありましたが、その都度、パットの位置やずれの調整を行い、気持ちよくパットを使える方法を探り ました。朝のオムツ交換時には陰部洗浄を行いました。Aさんの夜間の失禁に対する不安が減り、妻の睡眠時間を確保する排尿方法が確立できました。
 退院にあたっては、これらの介護方法を妻と次女に指導し、訪問看護やヘルパー、次女がいるときに負担の大きい介護ができるよう、調整しました。

*     *

 当初はAさんが重症であることから、スタッフの中にも「この状態で排便の自立が可能なのか」と不安がありましたが、多職種でカンファレンスを行い、離床やリハビリをスケジュール通りすすめる中で、身体機能を回復させることができました。
 Aさんの「トイレで排便したい」という気持ちを家族やスタッフで共有でき、リハや介護のスタッフの間で、日常的にリハの内容や排泄の様子を情報交換する ようになりました。在宅復帰に向けたとりくみに、私たちも自信を深めることができました。

(民医連新聞 第1561号 2013年12月2日)