広がり増える 日本の共同発電所 市民・地域共同発電所 全国フォーラムから
9月15日、日本にある原発が再び全停止しました。財界や政府は再稼働を狙いますが、世論は違います。9月21、22日に京都市 内で行われた「市民・地域共同発電所全国フォーラム2013」は、再生可能エネルギーの市民共同発電所の広がりを実感し、「原発のない日本は可能」と確信 できるものでした。(木下直子記者)
同フォーラムは、日本初の市民共同発電所ができた1994年から、数年ごとに行われてきま した。地球温暖化防止で活動する環境団体や、自然(再生可能)エネルギーの普及をめざす市民、研究者らで運営。今回のフォーラムは東日本大震災後、初めて の開催です。全国から270人が参加しました。
和田武実行委員長(元立命館大学教授)は基調報告で、原発の危険性と自然エネルギーの重要性、脱原発に動く世界の流れに触れ「日本も市民・地域主導の自 然エネルギー普及で、持続可能な社会に」と呼びかけ。続いて「脱原発、温暖化防止と自然エネルギー」「ひろがる市民・地域共同発電所」の2テーマでパネル ディスカッションしました。
■自然エネにはアベノミクスしのぐ経済効果
自然エネルギーの優位性が多角的に語られました。現在の主なエネルギーである石油や石炭な どの化石燃料は、気候変動を起こす温室効果ガスを排出します。また原子力は、事故を起こせば甚大な被害を出す危険すぎるしろものです。一方、太陽光や風 力、小水力などの自然エネルギーは枯渇せず、原料コストもコンパクト。事故のリスクや汚染の心配もほとんどありません(表)。
日本の国土は自然エネルギーに恵まれています。潜在する力は風力だけで日本の消費電力量1兆Kwhの四倍分に(環境省)。しかし、化石由来のエネルギー に依存している現在は、化石燃料の購入に毎年20兆円が投入されています。
「日本が自然エネルギー100%を目指せば、アベノミクスが打ち出す経済効果を超える内需が見込める」。グリーン電力証書を扱う竹村英明さん(エナジー グリーン(株))の報告にはどよめきが。自然エネルギーへの転換と省エネの効果を試算した結果です。
雇用も生みます。世界の自然エネルギー雇用は、ドイツ37万人、スペイン19万人、アメリカ44万人という風に大きく伸びています(ILO資料)。
■原発事故を機に国内の共同発電所が増加
実行委員会は全国の市民・地域共同発電所の調査を行いました。13年9月現在、115の団体が458基の発電所を42都道府県で運営しています。07年の前回調査から、発電所数は約2・5倍、発電量は3倍超(図)、共同発電にとりくむ団体も増加。これまでは市民団体が主でしたが、行政と市民が構成する地域協議会や生協、自治会や同窓会といった地縁組織の参加もみられるようになりました。
「地球温暖化への関心の高まりに加え、原発事故でエネルギー問題に社会が注目を始めたことなどが背景に。12年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取 制度が始まったのも大きい」と報告者の豊田陽介さん(気候ネットワーク)は分析します。自然エネをさらに普及するために、大企業に有利な買取価格の調整な どの課題が残ることも共有しました。
■地域社会にとっての価値
会場には自治体関係者の姿も。震災後、メガソーラーや風力発電などの事業を手がける大企業 が増えましたが、立地自治体へはほとんど還元されません。滋賀県湖南市は12年9月、「地域の資源を持ち出されることなく、地域で循環させ、地域社会の活 性化に」との問題意識で日本初の地域自然エネルギー条例を制定しました。同市の谷畑英吾市長が経過を報告、同様の条例は4自治体に広がっています。
■「希望」つなぐ事業
福島からも報告が。原発事故で深刻な被害を受ける福島県農民運動連合会とNPO法人自然エ ネルギー市民共同発電(大阪市)が共同で伊達市に50.4kWの太陽光発電所(福島りょうぜん市民共同発電所)を設置、9月から稼働しています。東北電力 に売電した収入の一部は復興基金になります。
「過疎・高齢化する地方で、自治を守るためにも、自分たちの足で立ちたい。原発のような迷惑なものを押しつけられないためにも―」。徳島県内の産・官・ 学・民の協同で自然エネルギーを開発し、地域活性化をめざして活動している徳島地域エネルギーの豊岡和美さんの言葉が印象的でした。
自然エネルギーをすすめ、原発に頼らない社会をめざすことは、住民が主体の循環型の社会をめざすことにもつながっています。
(民医連新聞 第1559号 2013年11月4日)
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