TPPストリート・ミーティングはじめました!@桑名 みえ医療福祉生協有志
「日本のTPP交渉への参加、どう思う?」。―わからない人も、賛成の人も、反対の人も、一緒に語り合う場をつくろう、と行動を おこした仲間たちがいます。みえ医療福祉生協・伊賀町診療所(桑名市)の職員たちです。その名も「TPPストリート・ミーティング@桑名」。(木下直子記 者)
□夜の駅前に語り場出現
九月二〇日、夜七時過ぎの桑名駅前。仕事や学校帰りの人たちがぽつりぽつりと行き来する中、ロータリーにテーブルやいすを並べる集団が現れました。ストリート・ミーティングを主催する、みえ医療福祉生協の有志です。
プロジェクターを発電機につなぎ、手作りのスクリーンに映像が流れ出したころには、一〇人ほどが集まっていました。
いすに座って話し始める人たち、映像を観る人たち、TPPの賛否を問うシール投票のボードを持って通行人に声をかける人もいます。夜の駅前に出現した空間は、小集会でも街頭宣伝でもない、まさに語り合いの「場」でした。
□緊張の初回は大盛況
企画は午後七時半から約二時間、月二回行っています。七月の第一回は、次のことなど考える 余裕もない「出たとこ勝負」でした。が、フタを開けてみると、インターネットで知って参加した人から、子連れのお母さん、通りがかりで足を止め、終了まで 熱弁をふるった人まで三〇人が集まる大盛況。次回の開催もその場で決定。この様子は地方紙でも報道されました。
「僕たちはTPP反対ですが、一方的に反対を言うだけではなかなか相手に響かないのではないか。それならTPP賛成の人も分からない人も一緒に話そう、 というねらいです。TPPに関心があって来る人はじっくり話し合え、シール投票をする通行人には一瞬でもTPPについて考える時間ができるんです」と、仕 掛け人の久野浩司さん(伊賀町診療所、事務)。
始めるにあたり、名古屋(金山駅)で毎週開かれているストリート・ミーティングを参考にしました。「最初は名古屋の企画に参加しようかと考えました。で も、仕事の後で名古屋まで行くのも大変だな…と考えているうちに、『じゃあ桑名でやればいいんだ』と、ひらめいたんです」。
□この場でつながる人たち
開始からまだ三カ月ですが、この場で知り合い、「常連」になった人たちはすでに複数に。この夜も三人が顔を出しました。
通りがかりで参加した熟年の論客Aさん。多国籍企業が起こす問題に以前から関心があった会社員のBさんは、インターネットや地域の企画から得た豊富な情 報を参加者に語ります。そして最近、運営にも加わっているのが建設労働者の岡田憲明さん(40)。TPP参加で、趣味で続けている音楽活動も規制されるか もしれないことを強く懸念していました。ツイッターで知り、「冷やかし」のつもりでのぞいてみたら「けっこう話せる人たちがいた」と語ります。
「TPPはあまりにも不条理。今の政治はアカンけど、政治に参加せず文句言うのも違う気がする。有権者がもっと賢くなって、しっかり意見が言えれば、民 主主義はもっと強くなるのかなと。だから僕は参加しています。無関心な人も関心を持とうという場を、地元に作った久野さんたちはすごい」。
地域に民医連の事業所がある意味を、教えてくれるひと言でした。
□変化をつくる側に
主催者側の職員もこの場で新しい体験をしたり、参加者に教えられることが少なくありませ ん。通行人と対話していた生川亮太さん(デイサービスいがまち、生活相談員)は、久野さんに誘われて参加した一人。シール投票は初体験。「いざ話すとなる と、食の安全や皆保険制度が危ないこと、何から話せばいいのか分からなくなる。でも、おもしろい!」。
久野さん自身、東日本大震災や、原発事故の後で「一歩踏みだそう」と考えるようになりました。若者や同世代がたくさん参加する脱原発デモで歩くたび勇気と元気をもらった気がしました。
「今まで誰かが用意した企画に参加するだけでしたが、これからは自分が参加する場を作って広げる側になろうと思いました。参加者が少ないとヘコむけど、 誰かの思いを少しでも満たせる場が作れている、という実感もある。ストリート・ミーティングは草の根民主主義。全国で広がれば嬉しい」。
(民医連新聞 第1557号 2013年10月7日)