社会保障制度改革 推進法はどこまで来たか (4)介護分野 負担増・給付削減に拍車 徹底した軽度者切り捨て
社会保障制度改革推進法は、介護サービスに関して「範囲の適正化」や「効率化」「重点化」を掲げました。これを具体化した国民会議の最終報告書 は、給付削減と利用者への負担増を提示。これまでも改悪続きだった介護制度ですが「今までなかった規模だ」との声が。最終報告書に基づく介護保険部会の審 議は、八月二八日にスタート。二〇一四年の通常国会で介護保険法の改正法案を通し、一五年の介護報酬改定にあわせ施行、という流れが予定されています。
■質低下と自治体間格差
要支援1、2の人向けの「予防給付」を、介護保険から市町村が行う「地域包括推進事業(仮 称)」に移し替えるとしました。要支援者を切り捨て、市町村への丸投げです。訪問看護やリハビリなどの医療系サービス、有料老人ホーム、高専賃といった特 定施設などの居住系サービスも含みます。
懸念されるのは、介護の質の低下や自治体間格差です。地域包括推進事業は、介護内容や運営基準を法で定めた全国一律の介護保険とは違い、内容や利用者負 担まで市町村の裁量次第。しかもケアの主力に想定されているのはボランティアです。
要支援1、2は、全認定者の四分の一(約一五〇万人)、介護サービスを受けている全利用者の二割(九六万人)に。民医連事業所の利用者全体では二~三割 が要支援です。「要支援の人に援助は不要かというと違います。さまざまなサービスを使い、やっと生活しているのが実情。認定が軽度に出る認知症高齢者は特 にそうです」と全日本民医連の林泰則理事。
「要支援者の給付費は全体の五%で、介護保険から外しても、大した財政効果はありません。ゆくゆくは要介護1、2の高齢者も切り捨てる突破口と考えてい るのではないか」。財界や財務省はすでに、要介護1、2を介護保険から外すよう主張しています。
特別養護老人ホームに関しては、新規入所を要介護3~5の中重度に限定。医療供給体制の見直しで病院から追い出される高齢者の受け皿を想定しているとみられます。
しかし、特養に入所する要介護1、2の人の入所理由は六割が介護者不在や介護困難、二割が認知症。改悪で必要な医療や介護が受けられない「難民」が増え ることは必至です。デイサービスの内容も「重度化予防に効果のあるものに重点化」とされています。
■軽減制度は縮小
負担増についてはどうでしょうか。最終報告書は、制度の持続や公平性を理由に「一定以上の 所得」の人の利用料を引き上げるべき、としました。「一定以上」とは、今のところ“夫婦で年収三百数十万円以上”などの案が示されています。介護保険を利 用する数十万人が該当します。これも今後、全利用者の負担引き上げを狙う足がかりとみられます。
特養などの施設に入所する低所得高齢者向けに行われてきた居住費や食費の軽減制度(補足給付)の削減も提案。所得を基準にしている補足給付に、資産や遺 族年金、世帯分離した配偶者の所得まで勘案するよう見直しを求めました。これは法改正なしで可能です。
「これは棄民。なかなか声を出せない分野を狙って大改悪を始めようというもの」と林理事。介護部ではこの秋、改悪内容を学び・知らせる介護ウエーブを全国に呼びかけています。(木下直子記者)
(民医連新聞 第1556号 2013年9月16日)