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民医連新聞

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相談室日誌 連載339 精神障害の当事者たちが立ち上がった 岡田麻理(奈良)

 「精神科以外の受診で医療費がかかる時は、食費を切り詰めるしかないんです」と話すのは、当施設入所中のAさん(三〇代女性)。
 Aさんは精神障害で障害基礎年金2級を受給中ですが、経済的に苦しい状況。「しんどい時や不調な時でも、先生やスタッフから入院した方が良いのではない か、と言われるのが怖くて…。入院するわけにはいかないので、本当のことがなかなか話せない。通院する際の交通費がかかるのもたいへん」と話します。
 精神障害者は継続的な服薬による副作用、生活リズムや食生活が整いにくく、身体疾患を併発している人が珍しくありません。それにも関わらず他の障害者と 比べ、無年金者や低い就労実態によって低所得です。医療費を支払うのが難しかったり、親にかける金銭的負担を気にして、受診できない人が多いのが実情で す。
 奈良県では昨年九月から精神障害者の「福祉医療」を実現させようという運動が始まっています。福祉医療(障害者医療費助成)とは、知的障害・身体障害の 手帳所持者で一定の等級以上の者は医療保険の自己負担分の助成を受けることができるという制度です。手帳の等級の違いはあるものの、国内すべての都道府県 で実施されています。しかし、精神障害者にはほとんど適用されていません。
 運動は地域の当事者会、県家族会連合会、奈良PSW協会、精神病院協会などが中心で、その他二〇の関係団体の後援を受けています。
 これまで、一〇〇人を超える当事者・家族・関係者が対県交渉に参加。また、県内の全市町村での自治体キャラバン行動は、精神障害当事者が運動の前面に立 つなどの画期的な行動で、自治体関係者にも共感を呼んでいます。
 こうした運動をきっかけに、中心団体の代表者と県担当課との折衝も毎月行われています。そして制度実現に向けて県が主体となって、県内の精神保健福祉手 帳所持者に対して実態調査が行われるなどの大きな前進があります。
 いま、来年度からの制度実現に向け、二周目の自治体キャラバン行動がスタートしています。

(民医連新聞 第1556号 2013年9月16日)