おもいっきり学んだ夏
夏は医学生や看護学生ら医系学生が一堂につどい学ぶ季節。学生自身が学習講演やフィールドワーク、職員や共同組織との交流を企画します。「医学生のつど い」は八月五~七日、愛知県豊橋市で行われました。「看護学生ゼミナール」は八地域に分かれ、それぞれ独自の名称で開催。全体で看護学生五六七人を含む八 五二人が参加しました。仲間とともに学生が学んだこととは? 全国各地のとりくみを紹介します。
医学生のつどい
第三四回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい(以下つどい)は、「終末期医療」をテーマに医学生一二四人を含む三六五人が参加しました。
つどい実行委員会では、この日のためにテーマを考え学習。「生活保護」や「TPP」も候補に挙がる中、要望が一番多かったのが終末期医療でした。この テーマなら、高齢社会の現状やその中での民医連の試みも学べる点に着目。学びにあたり、さまざまな職種との交流と、現場の理解を深めることも重視しまし た。
他職種との共同を学ぶ
冒頭、実行委員会事務局長の飯田和貴さん(岩手医科大学五年)が「終末期医療は緩和ケアだけではありません。終末期の現場でどういうことが起きているのか? さまざまな立場の人と考えよう」と参加者に呼びかけました。
記念講演は川崎協同病院(神奈川)の和田浄史医師。積極治療ができなくなり緩和ケアにさえ行き詰まっても、できることは何か? と終末期の患者に向き 合ったエピソードを涙や笑いを交え語りました。「最期まで飼い犬といっしょに生きたい」という人の病床に愛犬を入れたことも。やりがいは「人生最期の瞬間 まで寄り添い続けること」。そして学生たちには「民医連には『患者さんのためにできることはないか?』という思いを持った職員がたくさんいる。その人たち といっしょに、患者さんの思いをくみ取れる医師になって」と訴えました。
一〇テーマの分科会で学び、模擬ケースカンファレンスも行いました。分科会は看護師、SW、介護士、宗教者がそれぞれの視点で終末期ケアについて報告。 「医学生が学んだ終末期医療」をテーマにした分科会では、学生が大学で立ち上げた「社会医学研究会」の報告や、胃ろうの是非、無料低額診療事業の意義など も発表しました。
カンファレンスでは班ごとに五つの症例を「臨床倫理の四分割法」を用いて検討しました。学生たちは医師以外の職種の役割について理解を深めたり、困難 ケースに対して「どうすれば患者さんのQOLにつながるのか?」と考える場面も。カンファレンス後、「病気だけを診るのは、医療じゃない」と話した学生も いました。
最終日のまとめ企画では、三日間で自分の変化を振り返る「自分カルテ」を書きました。
閉会あいさつした山本一視医師(福岡・千鳥橋病院)は「人間は死ぬ時まで大切にされて生きたいと願っています。しかし、社会には人間の尊厳を奪う貧困や戦 争があります。基本的人権は働きかけないと発動しません。医療者として人権を守る行動もしてほしい」と呼びかけました。
参加した学生から「今後は病気だけでなく、患者さん全体を診る医療をしたい」「多職種でのカンファレンスを通じて、終末期医療は医師一人ではできないと実感した」などの感想がありました。
(矢作史考記者)
看護学生ゼミナール
北海道 生活保護の現状つかんだ
第10回MS(メディカル・スチューデンツ)フェスタ
7月27~28日、札幌市
「生活保護の問題と現状~命をつなぐ頼み綱」をテーマに、学生22人を含む37人が参加。実行委員が医療とお金、生活保護、健康で文化的な生活とは?について発表。法政大学の水島宏明教授が講演しました。
フィールドワークで生活保護受給者の話を聞き、2日目はゲームなどで交流。学生は「メディアの情報を鵜呑みにしてはいけない」「生活保護を考えるきっか けになった」「看護現場でのイメージがつかめた」と話しました。(釣本道子、北海道民医連・事務)
東北 大震災を忘れない
第24回T6ENC(東北6県エッグ・ナース・サークル)
8月9~10日、山形県天童市
学生70人を含む108人が参加。「東日本大震災からの新たな一歩」をテーマに、シンポジ ウム形式で岩手、宮城、福島が現状報告。全日本民医連の窪倉みさ江副会長が「あの日を忘れない…。決して」と題して講演しました。続いてグループディス カッションを行い「震災時の対応やその後の継続的な支援について知り、民医連のつながりの素晴らしさを知ることができた」との感想がありました。
夕食交流会では、職員の素晴らしいダンス、県別ご当地クイズ、班対抗ビンゴ大会と盛り上がり、他県学生との交流も深まりました。体験企画は「採血・点 滴・医療廃棄物の分別」「手洗い・ガウンテクニック・骨盤体操」「治療食体験・食事介助のブースに分かれ、貴重な体験ができました。来年は宮城県で開催。 最高学年の学生は職員としての参加を、それ以外の学生は再会を楽しみにしています。(阿彦陽一、山形民医連・事務)
北関東・甲信越 若者の貧困を考える
第4回NEF(ナース・エッグ・フェスティバル)
8月11~12日、山梨県笛吹市
看護学生87人を含む129人が参加。「若者の貧困について考えよう」を学習テーマに、 「自立生活サポートセンター・もやい」の冨樫匡孝さんが講演。冨樫さんは生活保護受給者の4割は高齢者で、働ける世代の半数は50代以上であること。財政 面の影響も含め、問題の本質は社会全体の高齢化であると指摘。厳しい社会状況の中で、「人とのつながり」「自分の居場所」が必要だと熱く語りました。
小集団討論では、各県連で学習を重ねてきた無料低額診療事業について論議。交流会ではWa(和)をテーマに「爆弾処理」「船出港」「輪っか回し」など知 恵と頭を使ったゲームで仲間の交流と団結を深めました。閉会式用に二日間のムービーを作成、「来年は群馬県で会おう」と約束を交わしました。(地協NEF 実行委員会)
関東 テーマは超高齢社会
第23回NEF(ナース・エッグ・フェスティバル)
8月12日、横浜市
「超高齢社会~自分の居場所を考える」をテーマに、学生130人を含む170人が参加。これから直面する超高齢社会に目を向けようと企画しました。
神奈川みなみ医療生協介護事業部長の関聡子さんが講演。高齢者とかかわった事例を通し、訪問看護師の仕事の魅力を語りました。「訪問看護師になりたい気 持ちが強くなった」と学生。ポスターセッションでは、超高齢社会について各県連が発表。学んだことを活き活きと伝える学生の姿が印象的でした。グループ ワークや交流会も盛り上がりました。実行委員のがんばりで、たくさんの笑顔が見られました。(渋澤智史、神奈川民医連・事務)
近畿 放射能の影響学ぶ
第11回ENS(エッグ・ナース・ステップ)
8月9~10日、神戸市
「被災者に寄り添う活動を目指して~放射線が人体に及ぼす影響を知り、何ができるか考えよう」を学習テーマに、学生77人を含む117人が参加。郡山医療生協(福島)の佐藤唱子看護部長が、被災地の現状と職員の安全を守りながらの医療・介護活動について話しました。
実行委員会が「放射線や原発関連のこと」「原発推進派・反対派に分かれての劇」を発表。報道されない被災地の現状を知り、「真実を知ることが大事」「被 災地ボランティアに行きたい」と学生たち。交流会ではミニ運動会や恒例の人間いすで盛り上がりました。卒年生は「国試がんばります」、低学年生は「来年、 また会おう」と言い現地を後にしました。
(阿波角真実子、奈良民医連・事務)
東海・北陸 みんなで笑顔に
第8回DANS(ディア・アクティブ・ナーシング・スチューデンツ)
8月17~18日、愛知県犬山市
「Smile Nursing~みんなで笑顔になろう」をテーマに、学生42人含む86人が参加。患者さんに笑顔になってもらうため、自分も笑顔になることを大切にしながら、学びました。
民医連の看護師2人が、患者さんに寄り添い、とことん関わったことで「笑顔になれた」事例を話しました。学生は「看護師は素晴らしいと改めて思った」 「患者さんの本当の気持ちを引き出せるよう傾聴し、希望に寄り添った看護をめざしたい」と、なりたい看護師像を思い描きました。運動会や交流会を通して交 流し、すぐに打ち解けました。たくさんの「笑顔」を見ることができたと思います。(岩下紗也加、千秋病院・事務)
中国・四国 ハンセン病元患者に聞く
第10回DANS
8月10~11日、岡山市
「Let’s learn truth~差別と偏見の鬼退治」をテーマに、学生80人を含む120人が参加。国立療養所長島愛生園を見学。人権を学び、自分たちにできることを考えました。
ハンセン病の元患者から差別や人権侵害について聞きました。「今も強く生きていることが伝わり、自分の生き方について考えさせられた」「聞いた話を身近 な人に伝え、差別や偏見のない社会にしたい」と学生。2日目は各県でテーマを決め、10分間で発表。3月から実行委員会の学生がメールやラインで進行状況 を確認しながら準備し、集会が成功しました。「DANS最高!」との感想文が心に残りました。(江川ちひろ、岡山民医連・事務)
九州・沖縄 自然災害に備える
第11回JEWL(ジョイン・エブリワン・エブリシング・ラップ・ラーン)
8月5~6日、熊本県阿蘇市
第11回JEWL(ジョイン・エブリワン・エブリシング・ラップ・ラーン) 8月5~6日、熊本県阿蘇市
「自然災害いつ備えるの? 今でしょ!」をテーマに学生59人を含む85人が参加。自然災害をまとめた県連ごとの発表と、「今、私たちにできること」の グループワーク、学習講演、アスレチックを楽しみました。講演「自然現象とその影響~特に火山噴火の地球規模への影響」では、自然災害がフランス革命や寛 政の改革に至った例など歴史と絡め学び、減災の備えが大事と認識を新たにしました。
被災地をフィールドワークしてきた県連も多く「看護に携わる私たちだからこそ、きちんとした知識を持って災害時に役に立てるようになりたい」などの感想がありました。
(高峯明貴代、くわみず病院・看護師長)
(民医連新聞 第1555号 2013年9月2日)