社会保障制度改革推進法はどこまで来たか (2)「最終報告書 「公助」を捨てた宣言負担増と給付抑制ずらり
八月六日に社会保障制度改革国民会議が最終報告書をまとめました。改革の工程表を定めた「プログラム法案」の骨子もまとめ、来年 から順次行うとしています。一年前に自公民の三党合意で成立した社会保障制度改革推進法に基づき検討してきた改革内容は、保育、医療・介護、年金の全ての 分野で給付の抑制と負担増を盛り込んだ、たいへんなものです。
報告書は、いまの改革の流れが二〇〇八年に福田内閣が設置した「社会保障国民会議」から続くものであると説明。そして議論は「自助・共助・公助の最適な組み合わせで日本の社会保障制度を形成すべき」との推進法に基づき行った、とのべています。
なお、報告書とともに「国民へのメッセージ」も発表。年間一〇〇兆円を超えている社会保障給付や、世界に例をみない高齢化を引き合いに、増税の必要性を 強調する内容。これから押し寄せる税と社会保障のダブルの負担増への覚悟を、国民に迫るかのようです。
■公助は「補完」!?
問題点を整理すると―。第一に、社会保障制度における国の責任を放棄し、国民の自己責任を基本に制度の見直しをめざしていること。国民の生存権を保障し、その義務を負うよう国に求めた憲法二五条にも反する考え方です。
「公助」を自助や共助で対応できない場合にだけ行う「自助と共助の補完」と位置づけました。その上で「徹底した給付の重点化・効率化が必要」と述べています。
■全分野で、給付減と負担増が
第二の問題は、保育、医療・介護、年金のすべての分野で、給付削減と負担増を提案した点。
保育分野では、公的責任を投げ捨てる新システムの推進や、営利企業の参入を拡大する「待機児童解消プラン」推進を掲げました。
医療分野では、七〇~七四歳の窓口負担を二割に引き上げることや、入院給食の自己負担増が。また、医療機関へのフリーアクセスの見直しも。紹介状なしで大病院を受診した患者に負担を求めたり、患者が医療機関を選択することを制限するゲートキーパー制の導入を提案。
国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移行する方針も。国保料(税)値上げに直結します。
介護分野でも、要支援1、2の軽度者(約一五〇万人)を介護保険から外したり、特養への入所を中重度以上の介護度に限定。また、一定以上の所得の人の利用料値上げなどを提案しました。
年金はマクロ経済スライドを毎年実施、給付額を減らし続けることや高所得者の課税強化を打ち出し、支給開始年齢のさらなる引き上げの検討も求めました。
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全日本民医連は、この報告書の撤回を求める声明を発表。また、消費増税を「社会保障充実のため」とした一体改革の嘘がはっきりした今、改革そのものの転換も求めています。(木下直子記者)
(民医連新聞 第1554号 2013年8月19日)