無低診患者の薬代助成を開始 鹿内博 青森市長にきく 助成はあたり前 “いのち守る”自治体の仕事
一面で紹介した通り、青森市が無低診利用者の保険薬局での薬代助成を始めました。民医連の保険薬局は、各地で自治体への薬代助成を要望していますが、容易に実現しません。なぜ助成を決めたのか、青森市長の鹿内博さんに聞きました。
―助成はどういうお考えで判断されましたか? また六カ月という期間は他の自治体より長いですが
中核都市市長会でも、保険薬局で無料低額診療事業が行えない問題の解消を国に提言しています(二〇一二年)。無低診の利用患者が、院内処方なら薬代は減免されるが、院外では減免されないという状態はおかしい。
市の財政も厳しいですが、困っている住民がいるのです。いのちに関わる問題です。
期間については「他で行っている二週間というのは短い。青森保健生協が無低の期間に設定している六カ月に合わせた方が整合性がとれる」という判断です。 そもそも私たちが無低診を知ったのは、〇九年に青森保健生協から「事業を始めたいが、手続きはどうしたらいいか」と相談されたことがきっかけでした。
保健生協が無低診を導入して、経済的に困難な人の治療を病院の持ち出しで行ってくれているわけなので、市としても支援すべき、という考え方に立ちました。
―無低診の患者が増えて予算がもっと必要になっても継続しますか? 財政難を理由に医療・福祉への支出を抑える流れが強まっていますが、どうお考えでしょう?
対象者が増えても、助成はもちろん続けます。
自治体の仕事は、住民のいのち、健康、財産をしっかり守ること。国民が個人ではできないことに対応するために、国があり県があり、そこで足りない部分は、私たちのような基礎自治体に役割があると思います。
また、予算が限られているなら、教育や福祉を最優先にやるべきです。八月から小学生の入院医療を現物支給にし、乳がん検診の対象年齢を三〇歳に引き下げ、保育料の軽減にも着手しています。
今回はお話しする時間がありませんが、私も「脱原発をめざす首長会議」に参加し、できれば、今年度中に「脱原発依存社会の実現を目指す方針・青森市版」 を作成したいと思っています。この問題も、「いのちを守る」という点で薬代助成のことと共通しています。一つの施策だけでは、いのちは守れません。日本国 憲法の理念が大事にされなければ、と思います。
(聞き手・木下直子)
(民医連新聞 第1553号 2013年8月5日)