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民医連新聞

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シリーズ 働く人の健康 ~パワーハラスメント~ 背景には“働きにくさ”がある 職場で語り合い、解決を―労安学校より

 今回は第九回中央労働安全衛生学校から。皆さんの職場でパワハラ(パワーハラスメント)が発生したとき、どのような対応をしてい ますか? 発生を防ぐ対策はしていますか? 産業医の阿部眞雄さんが「パワハラのない職場づくりと働き方・働かせ方」と題して講演しました。(丸山聡子記 者)

 「パワハラ対策」とは、なぜパワハラが起こるのかを考え、パワハラ被害者を出さない、働きやすい職場をつくることです。パワハラは根が深いのです。労働安全衛生活動として、「パワハラを、しない、させない、許さない」姿勢でとりくんでみましょう。

なぜ起こる? 根っこに何が

 発生した事例を見るだけではパワハラは解決しません。なぜパワハラを許したのか、なぜパワ ハラをする人を管理職にしたのか…。「なぜ?」を五回以上繰り返し、根本問題を探りましょう。パワハラの背景には「成果主義にもとづく強い同調圧力」や 「強い同質性要求と序列強制」があります。同じ職場にいる者なら、同じ利益のために同じ考えで働くのが当たり前、後から来た人間は先輩の言うことに従え、 という発想です。
 パワハラをする人に多いのが「ハラッシー・ハラッサー」タイプです。ハラッシーは「ハラスメントを受けた人」で、ハラッサーは「する人」です。若い頃に ハラスメントを受け、中堅になり「若い頃にビシビシやられたから、今の俺がある。同じようにやる」という人です。パワハラの手法をよく知っており、かつ 「正しい」と思っているので、やっかいです。
 このタイプに多いのが、取り入り、威嚇、自己宣伝、哀願、賞賛付与などの行動パターンです。「君はすごい」とほめた直後に威嚇したり、「僕には力がない から君の力が必要だ」と哀願したり…。そんな行動を繰り返し、他者をコントロールしようとします。
 「ハインリッヒの法則」というのがあります。一つの重大事故の背景には二九の軽微な事故が潜んでおり、さらにその背景には三〇〇もの「ヒヤリ」「ハット」事例がある、というものです()。重大なパワハラ事例の背景には無数の働きにくさがあります。長時間労働、仕事の指示・命令がわかりにくい、などです。これらの働きにくさに目配りをして、それを解決していきましょう。
 パワハラの結果、メンタル疾患を発症した人がいたら、必ず本人と一緒に働いている人たちの話を聞くこと。周りの人もパワハラを受けている可能性が高いからです。

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研修だけではなくせない

 「空気を読む」ことは、異質なものを排除するカーストの始まりです。同調圧力はパワハラの 温床です。全ての個人に独立した体験があり、異なる経験を持っています。同じ職場で同じ時間を過ごしていても、違う個人として違う体験をし、違う意見を 持っている。私たちは異なる人権、人生を持つということを理解しなければなりません。異なる人生に配慮し、多様性を維持することが大事です。
 「パワハラのない職場」は、誰もが働きやすい職場です。働く人たちが「できる」と思える仕事であることと、上手なコントロールが必要です。
 もう一つは「良き応援団」の存在です。休職者が復職するとき、短時間勤務にするなどの対応も必要ですが、一緒に働き、応援団となる仲間も不可欠です。
 パワハラの研修を受けただけでは、パワハラはなくなりません。パワハラにとりくむ先輩の経験、ストーリーを聞き、自分のことも語る。その中で「そういえ ば、あれはパワハラだったかも」と気付くこともあります。個人の「体験」を集団の「経験」にする語り合いを通じて、人は成長します。
 同じ職場で働くみんなで、「パワハラのない職場って何だろう」と、すぐに結論が出なくても、継続して議論していくことが大事です。

労働安全委員会を活かす

 多くの企業がパワハラ対策にとりくみ、コミュニケーション能力研修も盛んです。しかし、メンタル疾患は個人のコミュニケーション能力の問題で起こるのではなく、働かせ方が原因です。
 そのために職場の労働安全衛生委員会を活用しましょう。働き方を議論するのが労働安全衛生委員会です。極めて個人的と思える要求や思いも出し合ってくだ さい。個人的な問題に思えたことも、積み重ねることで課題が見え、普遍化できます。
 マニュアルではなく、一緒に働く人たちと職場にある問題を語り合い、「どうやったらパワハラをなくせるか」を議論していきましょう。

(民医連新聞 第1552号 2013年7月15日)

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