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民医連新聞

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フォーカス私たちの実践 タルクのアスベスト検診 山形・庄内医療生協 退職職員含め石綿障害を調査 看護師ら33人が対象に

 山口県の准看護師が昨年七月、タルクに混入したアスベスト(石綿)が原因で、中皮腫になったと労災認定されました。五月には大阪 の元看護師の女性(6八・故人)が全国二例目の労災と認定されました。タルクは一九八〇年代まで、手袋の再利用のため全国の医療現場で使われました。庄内 医療生協(山形)では、法人内の過去のタルク使用状況を調査、使用した可能性のある職員のアスベスト検診を実施しています。(新井健治記者)

 山口で労災認定された准看護師(52)は一九八一~八六年、山口県内の産婦人科医院で、分娩時に使う手術用ゴム手袋の滅菌作業に従事。手袋の滑りを良くするため、粉末状のタルクをまぶした際に吸い込んだそうです。
 タルクは黒板のチョークや医療品、化粧品に使われる白い粉。アスベスト鉱脈の近くで採掘される鉱石のため、一定量の石綿が混入しています。厚生労働省は 九五年に石綿を一%以上含むタルクを規制、二〇〇六年には〇・一%以上のタルクを製造禁止にしましたが、それ以前は濃度の高い製品も使われていました。
 現在は一回使った手袋は破棄されますが、八〇年代までは再利用され、洗った手袋の癒着を防ぐ目的でタルクを使う医療機関もありました。石綿に曝露する と、肺がんは一五~四〇年後、中皮腫は二〇~五〇年後に発症するといわれ、ベテラン職員や退職者に健康被害が起きる可能性があります。

整形外科で使用

 庄内医療生協は、昨年一〇月から法人内のタルク使用状況について調査。一九八四~八五年ご ろ、鶴岡協立病院で使用されていたことが分かりました。同院中央材料室で、整形外科検査用の鉛入り手袋の再利用に使っていたそうです。同院は八四年に新築 移転しており、移転前の状況については確認できていませんが、同様に使用していたと推測しています。
 法人は過去にタルクを使用したと思われる職員を対象に、アスベスト検診を呼びかける文書を配布。在職の職員三〇人、退職した職員三人の計三三人が検診を 申請しました。年齢は五〇代が二〇人と最も多く、職種は看護師一四人、介護職一一人でした(表)。法人以外の職場で使用した可能性のある人も八人いました。
 検診項目は、鶴岡協立病院が以前から行っているアスベスト検診に準じています。労働安全衛生法に基づく「石綿障害予防規則」に沿った内容で、問診と胸部X線撮影です。
 三三人中三一人が検診を受け、残り二人も五月中に受ける予定です。検診結果は要経過観察が八人、要精密検査が一人。要精密検査の人も、今のところアスベストとの関連は低いとされています。
 法人は二〇二五年まで、半年に一回の割合で検診を実施。費用は法人の負担とします。中途入職で、法人以外の医療機関で使用した可能性のある職員について も支援します。診断結果は労働基準監督署に提出、石綿検診個人票を作成し二五年まで保管します。

図 庄内医療生協のアスベスト検診結果

各事業所でも調査を

 全日本民医連は昨年一二月五日、「石綿を含有しているタルクによるアスベスト被害について」を通達、在職職員と退職者への調査と、医療上、労災認定上の支援を呼びかけました。
 全日本民医連職員健康管理委員会の積豪英(せきたけひで)委員長(熊本・天草ふれあいクリニック所長)は「すべてのタルクに石綿が含まれていたわけでは ありません。熊本でもタルクを使っていた事業所がありましたが、石綿が含まれていたかどうか、当時の製品の伝票が残っていないため分かりませんでした。庄 内医療生協のとりくみは全国の参考になります。在職職員は毎年の健診で検査できるため、退職職員の健康相談に向き合ってほしい」と話します。
 同委員会は今年一一月をめどに、パンフレット「健康で働き続けられる職場作り」の改定版を発行する予定で、同パンフでタルクについても解説します。ま た、全日本民医連はDVD『民医連医師のためのすべてがわかるアスベスト教本』を発行しており、積医師は「このDVDも参考にしてほしい」と呼びかけてい ます。

(民医連新聞 第1549号 2013年6月3日)