生保でカンジャのあたしの物語(7) “生きること”ささえる礎を揺るがしてはいけない 文:和久井みちる
これまで、生活保護に関するあれこれを5回にわたって書かせていただきました。最終回の今回は、生活保護の基本をもう一度振り返りたいと思います。
生活保護制度がなかったら、私は今頃どうなっていたでしょう。うつ病で働くことができないまま、未だに暴力から逃れることもできず、その後何年も地獄の ような日々を過ごしていたのでしょうか。もうとっくに絶望して、この世から消えていなくなっていたかもしれません。
私が、自分で自分を大切にする生活にむかって新しく踏み出そう、そう思うことができたのは、生活保護があったからです。生活保護制度は、私のことも守っ てくれることを知っていたから。だから、働くことができなくても、その「決断」をすることができたのです。おかげで私は生活保護制度を利用することがで き、新しい環境の中で「暴力」と対峙し、たたかうという日々を送ることができました。暴力とは何か、私はなぜうつ病だったのか、そこに向き合い、治療に専 念しつつ、仲間と出会い、自分の生活を立て直すきっかけをくれたのは、生活保護制度にほかなりません。
生活保護には様々な誤解や偏見がつきまとっています。しかしそれは、生活保護をよく知らない人たちが勝手な想像でふくらませてきただけなのです。
本当の生活保護は、困窮している人々を餓死や凍死から遠ざけ、住まいと布団と衣類を確保し、人間がまず「生きる」ということを保障します。そして病の治 療を受けさせ、健康を取り戻すための後押しをし、心身の状況に応じて、その人のできることや不安を共に考えるための行政職員を配置している…なんという、 すばらしい制度でしょう!
今や215万人の命がこの制度にささえられ、その5倍とも言われる人々が生活保護を必要としています。人間は生きるために生まれます。生活保護は、その 〝生きること〟をささえる礎です。決して揺るがしてはいけないと、強く願っています。
わくい・みちる
DV被害から失職し、3年半にわたり生活保護を利用。現在は復職し、貧困問題にとりくむ。生活保護問題対策全国会議幹事。著書『生活保護とあたし』(あけび書房)
(民医連新聞 第1547号 2013年5月6日)
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