相談室日誌 連載370 支援から「漏れた」ケースに遭遇して― 井浦昌江
要支援一の認定を受けているAさん(七〇代女性)は週一回のヘルパーを利用しながら、軽度知的障害がある姪のBさん(二〇代)と暮らしています。Bさん は一五歳で両親を亡くし、Aさんに引き取られました。訪問時、仕事に出ていたBさんとは会えませんでしたが、Aさんは「困ることはない。自分の娘も来てく れるから大丈夫」と語っていました。
ある日、Aさんから「腰を痛めたので医者を紹介してほしい」と、連絡が入りました。娘さんも一緒だというので、近くの病院を伝えましたが、反応ははっき りしません。心配になって訪問すると、Aさんは真っ白な顔で動けない状態になっていました。三日間食事が取れず、頭痛や動悸があり、市販薬を服用していた といいます。娘さんは隣でテレビを見ており、Bさんは自室から少し顔を出しただけ。すぐに救急車を呼び、Aさんは入院しました。
Bさんは一カ月前に仕事を辞め、障害者就労支援センターが相談に乗っていたとわかりました。高校卒業時に療育手帳を取得しましたが、学校から民間の障害 者就労支援センターを紹介され、行政の関わりはなかったといいます。他者とのコミュニケーションは苦手で、一日中ネットを見て過ごし、部屋はゴミの山に。 Aさんとの関係も悪化していました。
Bさんは自分の年金額も認識しておらず、生活援助が必要なことが明らかでした。就労支援センターは「退職は、時間や規則が守れなかったため。今後の就労 は難しい」とBさんをみていました。今回のことで行政の介入につながり、さらに娘さんにも支援が必要だという共通認識もでき、その方法を検討しています。
Bさんのような知的障害者が一度就労して退職すると、その後の支援から漏れてしまうケースは多くあります。一見「普通」に見えることで、家族を含む周辺 の人々は支援の必要性に気づきにくいこともあります。支援の際は世帯全体を視野に入れ連携していくことの重要性を再認識しました。
また、適切な支援のためのアセスメントを行える体制強化も望まれています。
(民医連新聞 第1547号 2013年5月6日)
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