相談室日誌 連載368 支援を拒む患者さん それでも、粘り強く 服部 啓吾(香川)
Aさん(八五歳・男性)は内縁の妻Bさんと二人で暮らしていました。Bさんは心臓が悪いことや軽い認知症もあったため、年金などの金銭管理はAさんが行っていました。
二年前にBさんの病状が悪化し、入院。家に帰れない状態と判断し、AさんにBさんの施設入所を提案。Aさんにも肺気腫が見つかりBさんの介護ができる身 体ではありませんでした。しかしAさんは「自宅に連れて帰る」の一点張り。二人には他に家族がおらず、キーパーソンは元同僚と、十数年会っていない従兄弟 でした。
また、自宅アパートを訪問すると、六畳の部屋には高く積まれたモノの数々。やっと一人が腰かける程度の空間しかない「ゴミ屋敷」である事も判明。そこ で、地域包括支援センターにも介入を依頼。Bさんの施設入所と部屋掃除をAさんに受け入れてもらおうと試みました。しかし、物一つ触ることも拒否されまし た。最終的にBさんに成年後見人を立てて年金の管理をAさんから移し、施設入所することになりました。
一方、Aさんも年金だけでは家賃を払うのが精一杯の困窮状態でした。しかし支援は一切拒否。それ以後、病院にも来なくりました。地域包括や友人からの説 得も受け入れないまま一年がたち、家で動けなくなっていたところを友人に発見され、受診、入院となりました。
病状が回復し、退院も見えてきたので、自宅の状況を聞きましたが「部屋の物は財産や」と、やはり掃除を拒否されます。しかしADLが格段に落ちたため、 そのまま帰宅すれば悪化することは目に見えていました。また、家主から立ち退きを迫られていたり、部屋のモノの中に通帳などが埋もれて見つからないなど、 追い込まれてきました。成年後見制度利用などもすぐには難しい状況です。
決定権があるキーパーソンがいない、地域包括なども強制介入できない、いわゆる「ゴミ屋敷」の問題の難しさを痛感しています。今後も関係者や医師・病棟 とも協力し、一つでも事態が好転するよう粘り強い関わりと援助を模索していきたいと思います。
(民医連新聞 第1545号 2013年4月1日)
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