相談室日誌 連載367 「ゴミ屋敷」の高齢者を支援して考えたこと 西 健太 (鹿児島)
独り暮らしのAさん(七〇代女性)は自宅で倒れている所を、日頃から訪問していた地域包括支援センター職員に発見され、当院へ救急搬入、栄養失調で入院となりました。
Aさんはいわゆる〝ゴミ屋敷〟の住人でした。地域包括の職員とともにキーパーソンの姪御さんと面談。彼女はAさんの対応に「困っている」と語りました。 食事を持っていっても拒否されることや、Aさんが他院に入院した時の医療費を滞納し、請求が回されてくると話しました。
AさんはSWには優しく、話好きな人でした。一方で「お金がないから、自宅に戻してくれ」が口癖で、入院中に認知症も進行。前日のことを忘れてしまうこ とも。また、保険証も二年前に期限が切れており、再交付手続きや、高額療養費貸付制度の利用もSWが手伝いました。
Aさんは二週間程で退院可能な状態になりましたが、ゴミ屋敷での生活はリスクがあると判断し、リハビリ病棟に転棟、退院後の生活について施設入所も視野に入れて検討しました。
そんな中、退院に備えて姪や地域包括職員と自宅に入ったところ、大金が入った通帳が出てきました。ご本人に金銭管理ができないことが分かり、姪や主治医などと相談し、成年後見制度を申請することにしました。
Aさんと面談を重ねると、施設入所もまんざらではない様子を見せましたが、最終的には自宅に戻ることに。介護保険サービスの利用もすすめましたが、本人 は「誰も家に入れたくない」と利用を拒否。退院から四カ月後、姪が来院しAさんのその後がわかりました。自宅でしばらく生活したものの、ふたたび入院に。 現在はグループホームに入所しているそうです。
今回のこの支援が適切だったかどうか、今でも考えています。「クライエントに対する適切な支援」ができたのか、それより家族への配慮が中心になった時期もあったのではないかと。
また、成年後見制度の活用にあたっては、申請から認定まで半年以上かかりました。手続き期間の短縮は課題だと思いました。SWが現場の声を発信し、行政 に働きかけなければと感じました。
(民医連新聞 第1544号 2013年3月18日)
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