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民医連新聞

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イデオロギーを超え憲法を実質化する運動を 評議員会・宇都宮健児さんが講演 同質の人々の集まりは和にしかならないが 異質の人々の集まりは積になって広がる

 昨年末、東京都知事選挙に立候補した弁護士の宇都宮健児さん。民医連もともにたたかいました。第二回評議員会で、選挙の経験と、今後の私たちの運動について講演しました。

 石原氏の突然の都知事辞任で選挙になり、私に出馬要請がきました。これまでとりくんできた 反貧困や脱原発の運動の一環として引き受け、「脱原発」「反貧困」「教育行政の根本的転換」「憲法擁護」の四つの政策を掲げて幅広い皆さんとともにたたか いました。猪瀬候補の大勝という結果でしたが、これは準備期間が短かった上に国政選挙と重なり埋没したこと、知名度不足、日本社会が右傾化する中での選挙 戦だったことなどが要因だとみています。
 とはいえ、有権者の一〇人に一人、約一〇〇万人が私に投票してくれました。五〇を超える勝手連ができ、ボランティアが駆けつけ、得るものも大きかった。
 しかし盛り上がる街頭宣伝の先に、無関心に通り過ぎる人たちがいました。有権者の一割は投票しましたが、九割には届かなかった。四つの政策で対話を広げ、都政の監視を続けていきたいと思います。
 公職選挙法の問題点も痛感。告示後は名前入りのビラは配れません。諸外国では常識になっている戸別訪問も禁止。立候補にかかる供託金は三〇〇万円。お金 がないと立候補できない。一票の格差とともに、民主主義に関わる大問題です。

■憲法めぐり緊迫した年

 自民党が再び政権につき、安倍タカ派政権による「逆流」が始まりました。原発は再稼働、社 会保障は自助・自立が基本で切り下げる。生活保護は三年で六七〇億円を削減。一方で防衛費を増やし、アベノミクスで景気回復を実現して消費税を増税しよう としています。日の丸・君が代の強制も狙っています。
 衆議院では、憲法改正への国民投票を発議できる三分の二の議席を改憲勢力が獲得しました。彼らは七月の参院選でも三分の二以上の議席を目指しています。憲法改正が政治的課題に上る緊迫した情勢です。
 自民党は憲法改正草案を発表しています。この中では、戦力の不保持をうたった九条二項を「自衛権の発動を妨げるものではない」としています。しかし、これまでの戦争は皆「自衛権」を口実に行われました。
 九九条は天皇、大臣、国会議員、公務員に憲法の尊重義務を課しています。国家権力を持つ者が国民の人権を阻害しないように。立憲主義の基本ですが、自民 党案ではこの義務を国民に課しています。立憲主義が逆転する大問題にもかかわらず、参院選の結果いかんでは実現しかねません。

■私たちに求められる姿勢

 保守勢力はみんなの党や維新の会など新党を作り、政治的主導権を確保しています。こうした「政治的主導権」をとることについて、リベラルの政党や市民運動も学ぶべきだと思います。政治的立場やイデオロギーを超えた運動が必要です。
 国民の八割が「原発ゼロ」を望んでいますが、その中には「即時ゼロ」の人から、「できればない方が…」、電気料が上がるなら「原発やむなし」と考える人 もいて、温度差があります。そういう人たちにも「自分の問題だ」と思ってもらえるよう、運動論を考えなければなりません。
 リベラルな勢力の人たちは「正しいことを言えば運動は広がる」と思っている気がします。正しい政策作りは一割の力で、残り九割は、有権者の心理に切り込む作戦に注ぐべきです。

■25条を実質化させる

 「護憲か」「改憲か」にとどまらず、「憲法を実質化させる運動」も必要です。
 生活保護は、国民の一・六%しか受けていません。ドイツでは八%、イギリスでは九%。生活保護が必要な人のうち実際に受けている人(捕捉率)は、欧米で は八~九割ですが、日本は二割。八割の人の権利が踏みにじられているのです。
 日本では憲法二五条を学校で教えるけれど、実際に権利として行使することは教えていない、教師自身もその方法を知らない。「護憲」と言うなら、たった一 人でもビラをまき、訴えて、今の憲法で保障されている権利を行使し、実践しなければなりません。
 民医連で働く皆さんは、医療・福祉を下支えしています。これを削減しようとする安倍政権と真っ向勝負し、憲法二五条を実質化させる運動を広げてほしい。
 好きな言葉に「同質の集団の集まりは和にしかならないが、異質の集団の集まりは積になって広がる」というものがあります。違う考えの人たちが手を結べば かけ算で運動は広がる。そんな運動の中核に、民医連になってほしいと思います。(丸山聡子記者)

(民医連新聞 第1543号 2013年3月4日)