相談室日誌 連載366 ショートステイは満床―「事業所の努力」だけでは 森田晃市 (福井)
当ショートステイは定員二四人の単独型。介護職員は一一人。一日平均約二二人の利用があり、ほぼ毎日満床です。随時、利用の予約を受けつけていますが、二カ月先までほぼ埋まっている状況。中には半年先、一年先の予約を相談されるケアマネジャーや家族もいます。
利用の理由は、日常的な介護負担の軽減や、冠婚葬祭、特養入所待ちなど、ニーズは様々。主介護者の突然の体調不良など緊急時の利用もニーズの上位にあり、他事業所と連携し対応する場面も増えています。
利用者は平均八五歳、平均要介護度3、毎月約九〇人の実利用実績があり、のべ約七〇〇人が利用してきました。自宅の介護者は、高齢である配偶者や働き盛 りの子が多く、早朝からの利用受け入れや夜間退所も多くなっています。
また以前に比べ、医療度の高い利用者が増加し、看護師の体制面から胃ろうや、吸痰、インスリン注射を行っている方の受け入れを一部制限せざるをえませ ん。認知症の症状が進行した対応困難な依頼も増え、それに伴いインシデント、アクシデントの発生率も多く、職員の精神的負担も増加しているように思いま す。
そんな中、二〇一二年度の社会保障制度改革推進法では「医療から介護へ、施設から在宅へ」といった方向性が打ち出され、今後ますます医療度の高い要介護 者、重度要介護者が在宅での生活を余儀なくされます。そうなった時にショートステイを含め、在宅のサービスが十分に対応できるのかどうか疑問に感じます。
介護報酬も、ショートステイの一日あたりの基本単価はデイサービス(七~九時間)よりも低く、経営も苦しい状況です。職員の待遇が悪いとモチベーションの低下も招きかねません。
「事業所の努力で」と言うのは簡単ですが、それでは根本的な解決にはなりません。国は現場の状況に沿った制度の見直しを図るべきです。利用者への手厚い ケアを実践するためにも、職員が安心して働き続けられる仕組みづくりが必要であると感じます。民医連だけでなく、すべての事業所と手をとりあって制度改正 に向けた声をあげていかなければなりません。
(民医連新聞 第1543号 2013年3月4日)