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民医連新聞

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反〝軍事大国・構造改革〟で政治を変える「国民連合」を 総選挙の結果をどう見るか、社会保障はどうなるのか ~渡辺治さんの講演から(下)

 昨年末、東京都知事選挙に立候補した弁護士の宇都宮健児さん。民医連もともにたたかいました。第二回評議員会で、選挙の経験と、今後の私たちの運動について講演しました。

 安倍政権は、国民に批判と警戒の強い構造改革再起動のために、「アベノミク ス」と称して新自由主義・構造改革の漸進路線を前面に掲げています。構造改革で痛んだ地方に財政出動で公共事業をバラまき、景気回復して七月の参院選に勝 利し、消費税引き上げを実行する狙いです。小泉政権や野田政権のやった構造改革の急進路線のように、闇雲に、社会保障や公共事業などの財政支出を削減する ことによる矛盾の爆発を避けるために、財政支出を行うのがミソです。
 しかし安倍の漸進路線は二つの帰結をもたらします。一つは湯水のような公共事業を行いながら大企業の減税は継続するために、消費税引き上げは一〇%では 足りなくなることです。さらなる大幅引き上げが待っています。もう一つは、財政支出の先が公共事業へのバラまきのため、国民の生活に直結する社会保障や公 務員賃金などは大きな削減にさらされることです。
 そこで、社会保障制度改革推進法による社会保障の引き下げの動きが真っ先に出てきます。生活保護基準の引き下げによる保護費削減から始まり、国と自治体 の責任を減らして、社会保障費を大幅に削減しようという試みが本格化します。
 安倍政権は、参院選前の今は明言を避けていますが、原発再稼働、TPP参加をすすめるでしょう。原発を海外に一基輸出できれば、維持費を含めて何兆円に ものぼりますから、財界は輸出したくて仕方ない。その時に「国内の原発は一基も動いていない」では説得力がありませんから、必ず再稼働をすすめます。
 日米同盟強化、集団的自衛権容認も新しい段階となり、安倍首相の積年の願いである憲法改正もすすめてくるでしょう。明文改憲の前に、国家安全保障基本法 のような形で、解釈や立法で憲法を改変し自衛隊が米軍と共同作戦ができる体制づくりをすすめようとしています。中休み状態の九条の会を各地で〝再稼働〟し なければなりません。

どう立ち向かうのか

 この間、日本政治の新たな段階を示す二つの力が台頭してきました。
 一つは、九条の会や脱原発、反TPPといった課題で広範な国民の運動が高揚してきたことです。一点の課題で良心的な保守の人とも共同が広がる、「反 TPP」で農協や医師会なども巻き込んだ地域を拠点にした運動が広がる、若い人やママパパたちなど新しい社会層が多く参加し、そこに中高年もいる―という 特徴があります。
 もう一つは、東京都知事選に現れた新しい政治をめざす共同の試みです。市民運動が擁立した宇都宮健児さんを、共産、社民、未来の党が支持するなど、市民 運動と政党、団体が応援しました。一点での共闘から一歩すすんで、「反貧困」「脱原発」「教育の自由」「憲法の生きる東京」という四つの政策を柱に〝政治 を変える共同〟が広がりました。背景には、市民運動と政党が共同して運動を続けてきた経験がありました。
 一方で、限界もあります。草の根で広がってきた運動の力を、十分に「政治を変える」ところまでつなげられなかったことです。

政治の「見える化」を

 新自由主義政治に立ち向かうためには、一点共闘での運動から、新自由主義政治に対抗し政治を変える「国民連合」へすすめることが必要です。キーワードは、「反軍事大国・反構造改革の国民連合対自民・民主・維新」という政治の対決軸の〝見える化〟です。
 いま、日米安保体制への批判や新自由主義への疑問を書いた本が売れています。国民の中で「日米安保はおかしい」「米軍基地は小さくすべき」「日米関係は 対等であるべきだ」「TPPは従属的ではないか」という模索が広がっているためです。
 新自由主義政治を変えるのは、保守の人たちとも連携し、その中で保守的な考えを変えていくような力強い運動です。その過程で大切なのは「要求では後退しない」ということです。
 民医連は多くの団体・個人と連携・共同する経験をすでに持っています。新自由主義政治に対抗する運動で力を発揮してください。

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(民医連新聞 第1542号 2013年2月18日)