フォーカス 私たちの実践 ヘルパーが透析食提供 岩手・ヘルパーSTにじ 介護職が透析食の理解深め利用者といっしょに調理も―
利用者の加齢や症状悪化、新たな疾病が加わるなどして、ヘルパーに求められる介護内容は変わります。岩手民医連の「ヘルパース テーションにじ」では、透析食が必要な利用者のために全スタッフで透析食について学び、調理にあたっています。介護福祉士・鈴木典子さんの報告です。
私たちヘルパーは、利用者が自宅での生活を安心・安全に過ごせるよう、環境の整備・食事の確保に努めています。
Aさん(八〇代女性、要介護2)は、慢性腎不全が進行し、掃除の援助から透析食提供のサービスに移行することになりました。当ステーションでは糖尿病の 利用者への食事作りの経験はありましたが、透析食は初めて。透析食について学習し理解を深め、Aさんに提供することにしました。
始めるにあたって立てた目標は、①リン・カリウムの制限について理解し、適切な調理方法で偏りのない食事を提供する、②Aさんの透析食への理解が浅く食 材の購入や摂取方法が偏りがちなので、ヘルパー任せの支援にせず、Aさんにも調理に参加してもらい、透析食の理解を深める―の二点です。
スタッフ全員が学ぶ
二〇〇五年からAさんとかかわっていますが、その間に介護度は、要支援から要介護2へすすみました。一一年二月に急激な体重増加、浮腫と呼吸苦でB病院 に入院し、シャントを作って透析開始。四月に退院、翌日からヘルパーが透析食の提供を始めることになりました。
これに先立ち、B病院で担当ヘルパーが栄養指導を受け、透析患者に制限が必要なリン・カリウムを多く含む食品や、一回分の摂取量などについて学びまし た。続いて、スタッフ全員で研修も。B病院の管理栄養士から、透析食の必要性と調理の工夫について学びました。塩分を減らす工夫や野菜の断面を多くして水 にさらすこと、煮る、炒めるなどでカリウムを抑えられる―など、やや難しい内容でしたが、具体的に学んだことで「やればできる」という感触をつかみまし た。
生活にも張り合いが
Aさんは、リン・カリウムを除去した醤油を病院で購入して使うなど、努力はしていました。一方で、ヘルパーが作った買い物リストにAさん自身がカリウム を多く含むスイカ・メロンなどの果物を書き足したり、肉や魚の保存がうまくできないなど、食事療法への理解が浅い様子でした。また、ヘルパーが作りおいた おかずは食べず、昼食は炭水化物のみで済ませるなど、カロリーが不足することも。
この問題をケアマネジャーに報告し、Aさんとご家族とともに、B病院でもう一度栄養指導を受け、透析食について学びました。その際ヘルパーからAさん に、調理や肉・魚の冷凍のための小分けなどをいっしょに行うことを提案しました。
具体的に次のようにとりくみました。▼透析後は体調が良くないため、透析のない月・水・金にヘルパーとともに調理し、作業をしながら塩分・リン・カリウ ムの制限について理解を深めてもらう、▼土曜日の買い物はヘルパー訪問前に家族に済ませてもらい、訪問後にいっしょに肉・魚を小分け・冷凍し、保存する、 ▼カロリー不足解消のため、夕食のおかず三品中一品を多めに作り、翌日の昼食に摂取するようにする―です。
いっしょに作業をすると、Aさんは食事療法を理解するようになりました。ヘルパーだけで調理していたときは、ボーッと座っているか、テレビを見ているだ けだったAさんが、いっしょに台所で立つことで室内でよく動くようになり、生活に張り合いが出たようです。次第に「これなら私も作れる」「次はこれを作っ たらどうかしら」と積極的にかかわるようになりました。
病態食に応えられるように
透析食にとりくみ、Aさんとともに調理することで、私たちヘルパーも自信をつけました。改めて食生活の重要性を知り、食材の特性も学ぶことができまし た。スタッフ全員でとりくんだことで、日常的に「こんなメニューもいいのでは」「こういう献立にしたら、好評だった」など、情報交換や工夫ができました。
Aさんのケアマネジャーとも信頼関係が深まり、その後も病態食が必要な利用者を紹介されるなど連携が続いています。さらに知識と技術を高め、様々な病態 食に応えていきたいと思います。
(民医連新聞 第1541号 2013年2月4日)