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民医連新聞

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私の3.11 (8)山梨 新津好江さん 福島の子の甲状腺検査に参加して

 甲府共立病院の臨床検査技師です。福島県は、原発事故当時一八歳以下だった県民を対象に甲状腺検査を実施しています。チェルノブイリの原発事故で は、小児の甲状腺がんが急増しました。甲状腺検査は福島原発事故の健康被害を明らかにするもので、私は昨年七月からボランティアでこの検査に参加していま す。
 甲状腺エコーの画像を正確に判定できる超音波検査士(体表臓器)の有資格者は少なく、福島県一県では技師が足りません。そこで全国から支援が入ってお り、私は親しい先輩技師から誘われました。民医連としてではなく、技師間のつながりで要請に応えました。
 最初に検査に行ったのは福島市の小学校と保育園。体育館に四~六ブースを作り、技師一人当たり一日に一〇〇~一五〇人を検査します。山梨の放射線量は 〇・〇四マイクロシーベルトですが、市内は〇・四~〇・七マイクロシーベルトもあり、びっくりしました。
 母の実家は山形で、親戚と同じ東北弁で話す子どもたちはすごく可愛い。首をきゅっと上げ、素直に検査に応じてくれます。一歳の幼児も検査しました。何を されているのか分からないから、きっと不安なのでしょう。一つのブースで泣き出すと、連鎖反応のように全ブースで泣き声が始まります。
 あどけない表情を見ていると、「なぜ、罪もない子どもたちが被害を受けなくてはならないのか」との怒りを抑えられません。原発事故は人災です。いったん 放射能が漏れたら、人間の力で止めることはできません。すべての原発を廃炉にすべきです。   

 その後も勤務の都合をつけ、計七日間、福島市や郡山市に行きました。中学生や高校生の検査もしました。三月にも、また行きます。今度は会津若松市になるかもしれません。
 遠く沖縄からも定期的に医師が来ており、何度も通ううちに顔見知りになりました。支援の医師や技師は「福島の再生に力を貸したい」との使命感に燃えてい ます。東日本大震災後、「何か私にできることはないか」と、ずっと悶々としてきました。ようやく自分の技術を活かせて良かったです。
 支援はまた、技師としての勉強にもなります。病院の検査対象は成人ばかりで、子どもの甲状腺を見る機会はほとんどありません。多くの症例に触れ、貴重な経験を積むことができました。

 福島県民と比較するために、山梨県内の児童の検査もしています。基準値を作らないと、健康被害が明らかになりません。一〇~二〇年後に原発事故の被害を補償するうえで、検査データは重要な役割を果たすはずです。
 全日本民医連は昨年一二月から、双葉町の委託で町民の甲状腺検査を始めました。放射能の健康被害を把握するには、長期にわたる粘り強い検査が必要です。 原発事故被害の補償を求めていくうえでも、データは不可欠です。今後、補償をうやむやにしないために、民医連の協力は大きな力になるでしょう。
 他の支援技師の中には、自分の休みを犠牲にして来ている人もいます。私は特別有休扱いにしてもらったので、支援に通うことができます。快く送り出してくれる職場に感謝したい。
原発事故はいまだ終わっていません。眼に見えない恐怖が、一日も早く終わることを願います。

(民医連新聞 第1541号 2013年2月4日)