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民医連新聞

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兵庫 尼崎医療生協病院発 生活保護基準引き下げ“ムリや” 受給者に行った暮らしの調査が訴えていること

 「生活保護の暮らしを知れば『基準額を下げる』などできないと思う。私たちは聞きとり調査をしてそう思った」。兵庫・尼崎医療生 協病院からこんな連絡が入りました。政府が今後三年間で削減しようとしている生活保護の額は六七〇億円で、九六%の受給世帯がこの影響で収入減に。これほ どの改悪は制度始まって以来です。そうした中、声をあげにくい受給者の実態を訴える、貴重なデータです。

生活保護は悪質?報道を機に

 調査のきっかけは、昨年起きた生活保護バッシングでした。これに伴い、政府からは生活保護制度の「見直し」まで浮上。「民医連の病院として、社会保障の締め付けに黙っていていいのか」という声が出ました。
 受給者は仕事を怠けている人が多いのか、税金で楽な生活をしているのか―マスメディアの報道だけでは職員たちも誤解します。調査を社会保障を考える場に も位置づけ、院内の「平和社会保障推進委員会」がすすめました。

【調査の概略】

 四~六月に生協病院を受診した生活保護受給者八七六人の中から、調査対象三〇人を無差別抽出。年代別で受給分布に合わせた人数にしました。
 三人一グループで対象者宅を訪問し、対面調査しました。生活保護を受けた理由や家計、「食事回数」や「外出」などの生活状況をくわしく聞く内容です。
 訪問期間は九~一一月に設定。開始にあたってはスタート集会や日本の貧困と生活保護をテーマにした法人学習会を実施、日弁連の資料や全日本民医連の声 明、民医連新聞などの自己学習も呼びかけ、看護や検査、事務など七六人で二八人の調査を完了しました。

どんな特徴があったか

 生活保護を受給したきっかけは半数以上が「疾病」でした(図1)。また、受給開始年齢は、五〇~七〇代が八割。年齢が上がると働ける場が少なく、収入も減ることや年金額が低いなど、困った時に使える制度が生活保護しかないことがうかがえました。

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【生活を切り詰めて】

 家計については八九%が「支出を切り詰めている」と回答しました(図2)。食費や水光熱費については大半が節約し、全国平均を大きく下回っていました。また夏場や冬場にエアコンを使わないと命にかかわる疾患の人は、電気代が節約できない分、食費を抑えていました。一日の食事が二食以下という人は四三%も(図3)。
 家具や家電の修繕が必要な人が四三%。湯沸かし器や冷蔵庫、ガスコンロやサッシなど、生活に支障が出そうなものも「修理も買い替えもできない」「いま貯めている」と、がまんしていました。
 被服履物は七〇%が「年間購入費用ゼロ」。うち七三%が「数年間買っていない」と答えました。

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【社会とのつながりうすく】

 これまでも「地域行事に出ない」「お祝いや香典が出せないので身内の冠婚葬祭にも行けない」などの声を受給者から耳にすることはありました。交際費が「ゼロ」の人は八一%(図4)にも。
 交通費は全国平均五〇二〇円(政府調べ)に比べ、一七〇九円。外出は、受診や買い物程度。娯楽のための外出は非常に少なくなっています。「生活保護だと 知られるのが怖い」と、知人との関係を断つ人も。社会から孤立しがちな受給者の姿が浮かびました。
 なお、何かあった時の相談相手が「いない」は三六%。また「いる」とした六四%も、相談相手の最多は「医療関係者」でした。

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まるで「生かさず殺さず」

 「約三〇件の小さな調査でしたが、日本の『最低生活水準』とされる層が、いかに切り詰めているかを痛感しました。基準を引き下げている場合ではない」 と、調査をまとめた同院SWの多田安希子さんは語ります(写真)。一方で「調査した人たちより低収入でも生活保護を受けていない世帯もあるのだから、もら いすぎなのでは?」という疑問も出たそう。これは、厚労省が生活保護基準引き下げの理由にした「逆転現象」ですが、多田さんの答えは明快。「その低収入の 世帯は生活保護の受給資格のある世帯で、そちらを救うべき。基準引き下げは、国民全体にはねかえります。江戸時代のような『死なない程度に生かされる』社 会にしていいのでしょうか」。
 調査結果は、職場や共同組織と共有し、自治体と懇談を行ったり、生活保護改悪に反対する運動に反映させる予定です。

(民医連新聞 第1541号 2013年2月4日)