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民医連新聞

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被災地発  宮城 長町病院 奔走する住民自治会とともに 仮設住宅支援プロジェクト

 政 被災地が二度目の冬を迎えました。現在、約一一万二〇〇〇人が仮設住宅で暮らしています(昨年一二月、復興庁)。仙台市内最大規模の仮設住宅・あすと長町 では、「孤立死を出さない」を掲げて、健康問題や生活再建、コミュニティーづくりなどの課題に立ち向かう仮設住民自治会と民医連の病院との連携が始まって います。(木下直子記者)

 一一月一〇日朝、あすと長町仮設住宅の集会室に、長町 病院の職員一〇人が集まりました。仮設自治会の役員さんたちがそれを迎えます。昨年六月から月一回、長町病院と自治会が行っている健康相談会です。第一土 曜日の午前中が定例。集会所で血圧測定や血糖検査、健康相談などを希望者に行うことと並行し、医師などが自治会から情報の上がった「気になる住民」宅を直 接訪問する二本立て。この日は一三人が相談会へ。訪問は一件、不眠を訴える独居女性でした。

■孤立・高齢 気になる住民

 「医師の訪問が、相談会の一番の狙いです」と、自治会長の飯塚正広さんは語ります。
 あすと長町は、二三三戸の大規模仮設。居住中の二〇〇世帯は、気仙沼市から福島県南相馬市まで多地域からの避難者。地域別に集団移転した仮設と違い、当初、隣人の顔も分かりませんでした。
 また、独居が全体の四分の一、住民の七割近くが六〇歳以上と高齢であることも特徴。阪神淡路大震災で発生した孤独死を誰もが懸念する状態でした。
 一〇人の有志が運営委員会をつくり、ゴミ出しのルール作りから行政への要請までとりくみました。コミュニティー形成にも苦心し、被災一年目に自治会を結 成。いま全世帯の九割が参加しています。「名誉のホッケ柄!」と、飯塚さんが見せてくれた足の甲のサンダルの日焼け跡が自治会役員たちの奔走を示していま した。「でも、集まりに出て来る人はまだ良い。出てこない人への手だてがなかった」と。仮設では救急車が週一回の頻度で呼ばれているような状況が。行政が 持つ住民の情報も、個人情報保護を理由に自治会には届きません。
 仙台市でも、仮設の見守りを目的に「きずな支援員」の委託事業が、一昨年六月から始まっていました。ところが、巡回は日中のみで、医療や介護の専門職がいないなど、不安に応えきれる内容ではありません。

■「やっと関われた!」

 自治会が長町病院に協力を依頼したのは、昨年三月に宮城で行われた全国青年JBがきっか け。フィールド活動として、あすと長町で縁日や住民訪問を実施。気になる住民の情報を持ち帰り、住宅改善などの指摘をする「専門職の力」に自治会が注目し たのです。病院は即座に依頼に応じました。
 「病院からも近く、気になる仮設でしたが、仙台市が委託事業所しか入れない方針で…。それでも地元の仮設支援組織の一員としてなんとか入ってきました。 正面から関われるようになって嬉しい」と、看護部長の長澤絹代さん。
 院内の各職種が参加し支援プロジェクトを結成。転院先を見つけられず治療を中断していた人や介護の必要な人などを自治会と共に掘り起こしていきました。 入院する住民も複数。一二月までの七カ月で、のべ一二一人の健康相談を行っています。
 相談会を始めてみて「毎週でも来てほしい」というのが自治会の本音です。「でも無償ではそこまで頼めないから」と、先日仮設に来た副大臣にも病院の支援活動への予算化を“直訴”しました。

 職員には、このプロジェクトが被災者の状況を肌身で知る機会にもなっています。「仮設の皆さんの抱える困難は、震災前からあったんだなと考えました」 と、この日参加していた鈴木美帆さん(OT)。プロジェクトの会議では、行政の復興政策が被災者が求めるものになっていない問題なども共有しています。
 いま自治会では、住民による住民のための復興住宅づくりを、研究者と検討中。「仮設住宅はあくまでも仮住まい。全住民がちゃんとした住まいに移れるまで 見届ける。被災者みんなで生き、笑顔で同窓会をしたい」と飯塚さんは語っています。

(民医連新聞 第1539号 2013年1月7日)