高齢者の生活見えてきた 北区社保協が都営団地全戸訪問
東京の北区社会保障推進協議会が一一月一八日、高齢化がすすむ都営団地の全戸を訪問しました。東京ほくと医療生協をはじめ一二団 体四二人が二人一組で、浮間三丁目アパート七七五世帯を訪問。一人暮らしで孤立していないか、無保険で困っている世帯はないか、実態をつかむのが目的で す。(新井健治記者)
浮間三丁目アパートは築四五年。二一棟のうち一一棟は、五階建てにもかかわらずエレベーターがありません。一人暮らしの高齢者や老老世帯が多く、呼び鈴や表札のない玄関も目立ちました。
訪問は日曜日の午前中。留守の家庭が多かったものの、二九〇人と対話し、なかには居間に上げてくれ長時間の対話になることも。「月六万七〇〇〇円の年金 暮らしで将来が不安」「消費税が上がったら、生活ができなくなる」など切実な声を聞きました。
北区社保協はこれまで二回、UR公団の団地を全戸訪問したことがあります。この時は国民健康保険料の滞納で無保険や短期証の世帯が複数あり、相談に乗り ました。今回はそうした世帯はなかったものの、一方で、骨折したにもかかわらず、手術の順番待ちで自宅に待機する高齢者や、失禁してもヘルパーが来なけれ ば二~三日そのまま、という一人暮らしのお年寄りがいました。
東京ほくと医療生協組織部の森松伸治さんは「医療生協の組合員宅だけでなく、全戸を訪問することで区民の生活の実情が見えてくる。今後もこうした行動を続けたい」と話します。
訪問行動では消費税増税に反対する署名にもとりくみ、二一五筆が集まりました。同社保協の小川延男会長は「団地のある浮間は川に挟まれ、かつては陸の孤 島と呼ばれた地域。保守的な土地柄のため署名は集まらないのでは、と思ったが、予想以上に反応が良かった。対話をすることで、区民の困っていることが分か ります」と指摘します。
行動の参加者から「生活は大変なのに、人様に迷惑かけないで頑張ろうとの気持ちが伝わってきた」「本人は『困っていない』と言っても、健康で文化的な生 活なのかと、疑問を感じる世帯も多かった」などの感想がありました。同社保協は訪問行動の内容を踏まえ、一二月二一日に北区と交渉する予定です。
(民医連新聞 第1538号 2012年12月17日)