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民医連新聞

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相談室日誌 連載362 患者さんの家庭を丸ごと支援して 杉木千浪(群馬)

 Aさん(七〇代女性)は脳梗塞で当院に入院した患者さんでした。娘と孫の三人世帯で一家の主な収入はAさんの年金。そのため医療費の支払いの相談で私たちが関わり始めました。
 やがて病状は回復、退院して家族と同居しながら在宅サービスを利用して生活されるように。しかし、Aさん宅を訪問した職員から「小学生の孫が日常的にA さんの介護をしていて、ネグレクト状態になっている」という報告が入りました。対応を検討しましたが、Aさん本人は在宅生活を続けたいと強く希望されまし た。
 その後、Aさんは脳梗塞を再発し再入院に。右片不全マヒと認知症状も進行。担当ケアマネジャーとも今までの経過や家庭・経済状況を踏まえて協議し、施設 入所をすすめることにしました。主治医からの病状説明の機会にAさんの娘さんとも退院後の方針を話しあいました。その結果、娘さんも自身の就労を目標に、 Aさんがグループホームに入所する選択をしました。
 しかし、再びこの一家に問題が。Aさんの入所後、医療費の滞納や受診のことで娘さんと連絡をとらなければいけなくなりましたが、なかなかつながりませ ん。ようやく電話に出たのはお孫さんで、Aさんがいなくて寂しいこと、また母親は仕事を始めたが真夜中に帰宅するため、朝も昼も食事は自分で買って食べて いると話し、「いつもひとりぼっち」と、訴えるのです。
 お孫さんの小学校に連絡し、担任に学校生活や親子関係についてたずねると、学校側もこの状態に悩んでいたことが分かりました。今は自治体の家庭児童相談 室にもつなげ、学校といっしょに孫の養育環境の改善もすすめています。
 このケースに関わる中で、患者様をとりまく家族や家庭、地域等の環境にも目を向けて相談支援を行っていくことの重要性を実感しました。
 日本には貧困やいじめ、児童や高齢者の虐待、自殺や犯罪の増加など様々な問題があります。そんな中で教育現場や地域社会などでも、クライアントの立場に 立って問題解決を支援していくソーシャルワーカーの必要性が、社会全体に求められていることを感じています。

(民医連新聞 第1538号 2012年12月17日)