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民医連新聞

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本紙SWアンケートから考える生活保護問題 森川清弁護士に聞く 違法な窓口対応にもバッシングの影響が

 前号で本紙が民医連のSW(ソーシャルワーカー)に行った生活保護に関す る緊急アンケート(197人回答)。福祉事務所をはじめ行政の対応が最近厳しくなったという回答が55%に。SWの報告には明らかに違法な対応も。なぜこ うした事態が各地で広がっているのか?生活保護問題に詳しい森川清弁護士に背景と対策を聞きました。

窓口対応なぜ悪化?

 行政の対応が厳しくなった背景には、厚労省から福祉事務所へ「不正受給がないように保護の認定調査も厳格化せよ」という指導の強化があったところに生活 保護バッシング報道が続き、拍車がかかっていることがあると思われます。
 指導が厳しくなる一方、「生活保護の申請権の侵害はしないように」との指示も出しています。
 しかし、生活保護の申請を受けるとケースワーカーには一日がかりの業務になります。家庭訪問をして書類をつくる。慣れた職員でも認定調査の業務に追われます。
 近年、申請者が増加する一方でケースワーカーが足りません。国が指示する一人あたりの受け持ちケースは八〇件ですが、一〇〇件を超える場合が珍しくあり ません。忙しさに追われ、中には違法に申請を受け付けない対応に出ている側面もあるのではないかと考えられます。
 もう一つの要因には、社会的な影響が考えられます。福祉事務所のケースワーカーとして配置されている職員の多くは福祉の知識に乏しく、かつ異動も激し い。生活保護への悪いイメージに影響されないはずがありません。窓口対応も悪くなると思います。
 福祉事務所のベテランケースワーカーたちも、若手が生活保護バッシングに影響されていないかを危惧しています。「一人で福祉事務所に行っても、申請を受 け付けてもらえない」という話は、生活保護相談の中で私も聞いています。

介入への対応は

 アンケートを見ると、医療機関が必要と判断した治療にも福祉事務所が介入している事例もあります。
 このような場合、相手に根拠を示して反論してください。「医療に関しては健康保険法に準じて行うこと」と法的に定められています。こうした行政の対応に法の根拠をしっかり提示していくことが大事です。

バッシング拡大の理由

 政府はいま、保護基準を下げようとする理由に、生活保護よりも貧しい人が多くいることをあげています。残念ながらそれを支持する世論もあります。なぜで しょう? 一〇万円の年金で生活する高齢者世帯、年収二〇〇万円に届かない非正規労働者の激増…、生活保護バッシングに人々が容易に同調する背景に、貧困 の拡大があるのではないかと思います。
 しかしこの基準引き下げは、生活保護基準以下の人の生活を放っておいていいのか? という前提を無視していることが最大の問題です。
 以前からバッシングは行われていましたが、今は報道がエスカレートさせています。ここ最近、不正受給の話題は絶えません。一方、札幌で姉妹が孤立死して も、検証した報道はほとんどありません。政府は二〇〇七年にも基準引き下げを検討しましたが、大反対にあって一度失敗しており、今、満を持してとりくんで いるような印象があります。

自分に跳ね返る

 生活保護基準の引き下げの影響は―。まず、受給者が困窮します。特に高齢者です。そもそも老齢加算が廃止され、高齢の受給者はすでに困窮しています。
 そして、SWアンケートの意見にもあるように、生活保護ではないが、ぎりぎりの「ボーダーライン」の人に影響します。就学援助や非課税世帯の基準も変わり、対象者が縮小するなど貧困がさらに拡大します。
 生活保護制度は国民に「何か」あった時に生活を保障するセーフティーネットです。これが引き下げられると国民全体の生活が低下し、自分たちに跳ね返ってきます。
 社会保障制度改革推進法で生活保護の次に医療が狙われています。生活保護制度を守ることは、すべての国民の生活を守ることなのです。(矢作史考記者)


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アンケートでは生活保護の運用が厳しくなったとの回答が55%で、内訳は
(1)「申請が難しくなった」45%
(2)「受給者の医療や介護への介入」35%
(3)「廃止や打ち切りが増えた」22%

窓口対応例

■申請意思を示しても「まず家族に電話を」と曖昧にされる。「申請」を「相談」に切り替える技術が磨かれている
■受給開始から打ち切り時期を明言
■うつ病で就労不可の診断の人にも「保護期間は3カ月程度」と説明
■独居の受給者宅の玄関先に靴が2足あることを「ぜいたく」と言われた。
■電動アシスト付自転車の利用を禁ずる
■通院の移送費が支給されない
■精神科デイケアの回数制限をされる
■死亡退院した受給者の葬祭扶助が支給されない。同様の事例複数

(民医連新聞 第1537号 2012年12月3日)