相談室日誌 連載361 老健のSWが願っていること 大崎洋子(富山)
介護老人保健施設(以下、老健)はリハビリテーションを中心とした医療を提供し、利用者の「在宅復帰を支援」することが目的の施設です。そこで働くSWは、利用者の在宅復帰に向けて、自分たちの果たす役割は何なのか? と日々悩みながら相談に対応しています。
寄せられる相談内容の傾向は大きく三つに分かれます。一つめは、一時的に入所して、再び在宅生活・介護を行えるケース。二つめは、在宅生活や介護が限界 に達し、特養入居までは程遠い場合の「駆け込み」ケース。三つめは、今まで健康だったものの、病気の発症やけがにより急激に身体状態が変化した結果、今後 の生活を考え直さなくてはいけなくなったケースです。
当老健の入所者の六割は病院から転院された方たちです。そのため相談では、生活動作能力の低下で在宅生活が困難なケースや、その家族への支援が大きな課題となっています。
在宅復帰に大事なのは、自宅の介護環境の有無です。施設では職員が二四時間交替で利用者に関わることができますが、自宅では限られた介護者の中でみていくことになります。
介護保険を利用しても、要介護認定で在宅サービスの利用限度額が設定されます。しかし限度額の中だけでは、当事者が安心して自宅での生活を送れるほど十分なサービスが受けることができないのが現状です。
また、最近では家族が県外在住で、本人は一人暮らしや高齢者世帯であったり、同居者がいても日中は働きに出ていることが多いなど、家庭内の介護力不足は 否めません。そのため当施設の利用者の在宅復帰は、本人の身体動作能力が向上しても、介護する側の人の事情や思いが強く影響し、自宅に帰ることが難しい ケースが多いことも事実です。
利用者の多くは自分の歩んできた人生の足跡を大切にしながら、住み慣れた自宅で生活することを望んでいます。リハビリをして元気になった結果が、施設で の生活という結果になってはいけません。老健のSWとして常に必要だと感じるのは、介護者・家族の生活をサポートできる医療と福祉の制度の拡充です。
(民医連新聞 第1537号 2012年12月3日)