相談室日誌 連載358 介護保険だけでは足りないサービス提供の制度 是澤雅代(京都)
Aさんは四〇代の男性。二〇代の半ばに統合失調症を発症し、入院歴もあります。作業所に通所した時期もありますが、ここ数年は自宅の二階の自分の部屋にこもりがちで、同居している両親とも顔を合わさない日もありました。
そんなAさんが脳梗塞を発症。救急病院を経て当院の回復期リハビリテーション病棟に転院されてきました。
利き手側である右上下肢に強いマヒが残り、介護認定は要介護5。半年間リハビリを継続し、スタッフと笑顔で会話を交わすこともできるようになりました が、身体的には自宅の急な階段の昇降は困難でした。一階には病気治療中の両親が生活していて本人の生活の場はありません。また両親が息子を介護することは 難しく、施設入所を希望するも、この年齢での入所は困難で、アパートを借りて初めての一人暮らしを始めることになりました。
週に複数回の通所サービスと一日数回の身体介護のヘルパー、福祉用具のレンタル、訪問看護を利用すると限度額を大きく超えてしまい、必要な身体ケアが十 分受けられません。そこで、障害者自立支援法による上乗せサービスを利用しようと考えました。
介護保険制度における上乗せサービスの内容は各市町村により異なります。京都市では、原則要介護5で両下肢または両上肢機能障害と体幹機能障害の組み合 わせで「四肢機能障害1級」相当とみなされ上乗せサービスが利用できます。しかしAさんは右の上下肢障害2級のみで上乗せサービスは認められません。精神 障害者手帳の2級も持っていますが、この手帳では外出時のガイドヘルパーしか認められませんでした。
現在Aさんは限度額を超えないように入浴を週二回、自宅でのシャワー浴にせざるをえない生活を送っています。しかし本来、上乗せサービスは制度の枠にあ てはめて考えるのではなく、必要な場合にその人に合わせて不足するサービスを柔軟に適用していくべきではないでしょうか。他の都道府県・市町村ではどのよ うに適用されているのか教えていだだければ、と思っています。
(民医連新聞 第1534号 2012年10月15日)