共同組織こんなこと、できる
地域で安心して住み続けるために、医療生協や友の会の共同組織はさまざまな挑戦を始めています。全日本民医連が9月に開いた共同組織活動交流集会でも、一人暮らしと高齢者世帯の見守りやネットワークづくりの経験が数多く。三重と京都の報告を紹介します。
三重
合言葉は「ひとりぼっちにしない」 独居高齢者訪問/お買い物班会
みえ医療福祉生協・四日市地域坂部支部では、独居高齢者の訪問や、お買い物班会にとりくんでい ます。2010年夏、坂部支部の地域の市営住宅で、熱中症などによる孤独死が2カ月足らずで立て続けに3件、発生しました。1970年前後に建った400 戸ほどの古い市営住宅の入居者は、高齢者や障害者が多く、亡くなった3人は生活保護受給者でした。
このことを話し合った支部の運営委員会では、孤独死の根源に貧困があることを学習。医療生協ができることを話し合い、組合員かどうかは問わず独居高齢者 の訪問を始めました。訪問前にはあらかじめチラシを配り、医療や介護、暮らしの相談に乗ることをお知らせ。職員と組合員がペアで訪問し、対話内容は「なん でも相談カード」に記録します。
訪問すると、認知症で独居の方、経済的な苦しさを訴える世帯、山のような汚れ物の中で自力歩行もできず1日1食で過ごしていた障害者などに遭遇。初めて知る地域の実情でした。今年も8月と12月が訪問期間です。
「医療生協にできること」の具体化の1つが、「お買い物班会」です。近所にあった商店街がなくなり、高齢者は買い物に困るようになりました。そこで、毎 月一人暮らしの高齢者を車に乗せて買い物に出ることに。買い物の後は皆で食事も。2010年4月に始め、今年9月で21回・のべ186人が参加していま す。
課題はまだ多いですが、「ひとりぼっちにしない」をキーワードに活動していきます。
京都
西陣のまち「見守り隊」 食事会、喫茶が3本柱
京都市上京区の西陣地域にある上京健康友の会では、2010年から高齢者の見守りボランティアを始めています。2カ月に1度のお食事会、週1回の友の会喫茶とあわせて、「地域の見守りの3本柱」の1つです。
訪問日は第2・4週の火・金曜。訪問の対象は現在61人。見守られることを希望した人や、機関紙の「友の会だより」を配る際に気になった会員さん、高齢世帯、閉じこもり、認知症の疑いのある人などです。
一方の「見守り隊」は、隊員募集に応じたボランティアの友の会会員12人と職員です。隊員は個人情報保護の誓約書を記入して、活動可能な日程を登録し参 加します。2人1組で半日で5~6世帯の安否確認(=世間話)。変化があれば診療所につなぎます。
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見守り活動のきっかけは、友の会と共に地域で歩んできた上京病院が57年の歴史に幕を下ろし、診療所に転換したことでした。この転換に際して会員さんた ちからとったアンケートには、病院が無くなる医療面での不安とともに、一人暮らしの不安や話し相手がいないことなど、日常生活での問題が多く書き込まれて いました。高齢化し独居世帯も多い地域の状況を色濃く反映する結果でした。
訪問開始から約1年半で、〔病状が心配されたが、他者の訪問に拒否的で診療所が関われなかった人を友の会が橋渡し〕〔妄想や問題行動のある人に声をか け、毎週友の会喫茶に来てもらって安否確認〕〔独居の多い町内で、毎日窓を開けて安否を知らせるなどの約束事を決めて独自の見守り活動が始まる〕などの事 例がありました。見守りは地域の安心ネットワークの構築事業であり、見守り隊はコーディネーターだと実感しています。
いまは友の会への入会を勧める目玉にもなりつつあります。隊員をもっと増やすことや訪問日程を広げること、援助者のレベルアップなど課題も見えてきました。
(民医連新聞 第1533号 2012年10月1日)