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民医連新聞

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相談室日誌 連載357 水俣病検診に参加して「公害」をあらためて考えた 遠藤賀子(東京)

 水俣病被害者救済特別措置法の申請締め切り(七月末)前に行われた東京と熊本の集団検診に参加しました。
 私にとって水俣病は、「教科書で教わった公害病」「遠い地方の出来事」というイメージでした。しかし、検診に参加して、まったく過去のものではなかったと実感しました。
 東京の検診は代々木病院で行われました。私が問診をした患者さんたちは、「地元を離れているため、情報が入ってこない」と、訴えていました。
 首都圏の五〇代の男性は、「兄弟たちは申請していたが、自分は救済法やこれまでの補償制度について、何も知らずにいた」と。学校を卒業して以来、ふるさ との水俣を離れて生活していました。今は両腕の痛みの感覚がまったくありません。今回の検診は、たまたま知ったと話しました。
 また、水俣病の疑いを持ちながら、親の仕事に気兼ねして、これまで言い出せなかった、という方もいました。「今回が最後の機会だ」と、兄弟で話し合い、 申請を決意したものの、肝心の手続き方法が分からず、知人から民医連の検診を教えられて来たといいました。その方は、水俣病以外のさまざまな病名で医療機 関にかかっていました。
 今回の検診に参加するまで私は、熊本や鹿児島の地元以外に水俣病の患者さんがいるとは想像もしませんでした。地元から離れ住んでいる方は、他の水俣病患 者と出会う機会がそうそうありません。そのため、症状の悪化をかかえていても、一人で誰にも相談できない、どこから情報を得たらいいのか分からない、とい う不安を多くの方が持っていらっしゃるのではないか、と思うのです。
 公害を出しながら作られた製品の恩恵を、別の地域の人たちが受けるという構図。これは水俣病以外の公害にもあてはまります。今回の検診をきっかけに、公 害被害は、その地方特有の問題ではなく、私たちの国全体の課題として考えていきたいと思いました。

(民医連新聞 第1533号 2012年10月1日)