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民医連新聞

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共同組織拡大強化月間スタート! 助け合いを生きがいに 石川・金沢北健康友の会

 一〇月から共同組織拡大強化月間がスタート。民医連といっしょに安心して住み続けられるまちづくりをめざす共同組織の役割は今、ますます光っています。地域の孤立をなくすためのとりくみがその一つ。石川・金沢北健康友の会の助け合い活動を取材しました。(矢作史考記者)

 九月一三日、金沢北健康友の会が運営する「生きがいセンターまつもとてい」で“一人暮らしのための料理教室”が行われました。「簡単にできる卵料理」がテーマ。
 講師は友の会会員で元料理人の上田慎一さん。まずは参加者に温泉卵の作り方を伝授。「カレーでもサラダでも、物足りないときに入れれば美味しいよ」。
 また、和食調理の万能調味料として市販のめんつゆが登場。「これさえあれば、煮込みでも味付けでも一通りができる」と。「これなら百円均一の店でも買える、便利や」と盛り上がりました。

がらんとした部屋に

 料理教室のきっかけは「おにぎりをつくってあげてほしい人がいる」と、城北病院の相談室から友の会に入った連絡でした。
 友の会会員がその人のアパートを訪問すると、テレビと布団、未使用の電子レンジと炊飯ジャーがフローリング上にあるだけの、がらんとした部屋で生活され ていました。驚いた会員が友の会事務所と相談し冷蔵庫や食器やコメなどを調達、炊飯の方法や電子レンジの使い方を実演して教えました。帰りぎわ、その人 は、友の会員に料金を払おうとしました。そして無償だと聞かされ、涙しました。
 困窮して城北病院にたどり着き、生活保護が受けられても、その後うまく社会生活が送れない人は珍しくありません。これを受けて友の会では「きっと他にも 同じような人はいる。炊飯の次は、おかず作りを」と、アイデアが出たのです。
 先述の人ももちろん料理教室に参加しました。感想は―「レシピを教わり、まな板ももらった。今度は包丁で野菜を切れるようになりたい」。そして「本当は おしゃべりが好き。誰とも話さず一人で部屋にいるのは辛い。まつもとていに来れば話ができますね」と。
 教室の後はみんなで試食会です。調理に時間がかかっても食べるのはあっという間。「美味しかった」「今度は何をやろうか」と相談が始まりました。

誰かの役に立てる場所

 リーマンショック以降、城北病院では、生活相談が増加。しかし、生活保護は受給できても心 配な人のその後を病院で見守るには限界があります。また、受給者たちから共通して出されていたのは「人との交流や仕事への復帰」、「人の役に立ちたい」、 「夢を持ちたい」という声でした。
 そこで金沢北健康友の会の出番が。友の会でも事務所に飛び込んでくる相談を数多く受けるようになっていました。「人との交流や目的がない生活は辛い。そ こで考えたのが、生きがいセンターまつもとていです」と藤牧渡会長。
 二〇一〇年にオープンし、毎週水曜にサロン、月に二回レストランを開いています。季節の食材を使った料理を出すレストランは、病院職員からも好評です。
 また、有償ボランティアの事業部も設置。網戸交換や庭の草むしり、チラシ配布や農作業。個人宅のカーテン設置や、菜の花薬局の駐車場整理も受けていま す。これに参加したことをきっかけに、自信を取り戻した人もいます。
 レストランのコックで料理教室先生役の上田さんも不景気で店をたたみ、今は生活保護を受給中。「上田さんにとって、まつもとていは?」と聞くと「私の能 力が少しでも誰かの役に立てばいい。ここでの活動が次につながればと思っています」と返ってきました。

友の会の価値を

 「まつもとてい」には、年間三〇〇人が出入りするようになりました。「最初は何も話さなかったが、ここに来て明るくなった」という人も少なくありません。
 藤牧会長は「まつもとていを通して、病院の職員たちも友の会のことがより分かるようになりました。これを生かし、職員も自分の言葉で友の会の価値を訴えてくれれば嬉しい」と語りました。

(民医連新聞 第1533号 2012年10月1日)