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民医連新聞

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シリーズ 健康働く人の健康 ~学校現場~ 長時間労働が常態化 “生徒と向き合う時間”がない

 二〇〇四年、教壇に立ってからわずか半年後、新卒教諭が自ら命を絶ちました。困難な児童を抱え、クラス運営に支障を来しながら適 切な援助を受けられず、うつ病を発症していました。「公務災害と認めてほしい」との遺族の訴えは今年七月、四年に及ぶ裁判の末に高裁で認められ、確定しま した。「これを機に学校は変わってほしい」と語る遺族。この言葉が示す学校現場の実態とは…。

 この二〇年で、教職員の病気休職、なかでも精神疾患による休職者数は急速に増えています。二〇一〇年の休職者は約一%で、うち精神疾患で休職する人の割合は、一九九二年の〇・一一%から二〇一〇年の〇・五九%へ、五倍以上に激増しています(図1)。
 「特にこの一〇年余りで、一気に忙しくなりました」と話すのは、東京の中学校で教える小峰順子さんです。小峰さんら東京都教職員組合(都教組)世田谷支 部は昨年、区内の教職員に勤務実態調査(通称・ヘトヘト調査)を実施。約五〇〇人が回答し、「いきいき教育をしたいけどヘトヘト」な教師たちの姿が明らか になりました。

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過労死ラインをオーバー

 公立学校の教職員は「原則として時間外勤務を命じない」と政令で定められ、時間外手当はなく、タイムカードもありません。
 ヘトヘト調査によると、午後四時四五分の退勤時間は七~八時が当たり前、出勤も定時の三〇分前がもっとも多く、休日のはずの土日でも平均で二週に一日は 出勤。一カ月の超過勤務時間は平均八三時間で、厚労省の過労死ライン八〇時間をオーバー。法律で義務づけられている四五分の休憩も「あまり取れていない」 「ほとんど取れていない」が九割以上です。
 その結果、自身の健康について八割以上が「かなり不安」「不安」「少し心配」とこたえました。
 教職員を長時間労働に追い込む原因は何か。ヘトヘト調査では、「土曜授業」「自己申告書」「公開授業」「研修報告」などが“いらない仕事”として挙がりました。
 全日本教職員組合中央執行委員の米田雅幸さんは、「“特色ある学校づくり”の号令で、学習以外の行事やとりくみが増え、教員の負担が増している」と指摘します。
 「公開授業」とは、一週間一日中、いつでも学校に来て授業を参観できるというもの。教員は長時間にわたる緊張を強いられ、準備にも膨大な手間がかかりま す。「せめて一日二・三校時だけの公開に」「子どももヘトヘト」との声が寄せられています。
 小峰さんは、「意義あるとりくみでも、予算や人手が補充されないので、子どもと向き合う時間が削られる」と言います。特別支援学級の生徒を普通学級へ受 け入れるとりくみもすすめていますが、職員の加配はありません。

教員間のつながり薄れ

 「子どもとかかわる時間」をさらに奪っているのが、上から義務づけられる研修や、各種 報告など書類の多さです。「自己申告書」は、年度初めと中間、年度末に提出し、校長などと面談します。中学校なら、進路指導、特活、生活指導について、具 体的な数値目標を求められます。たとえば「学級だよりの発行」は「何号まで? 週に何回?」、部活動の活性化では「部員は何人? 大会ではベスト○が目 標?」という具合です。校長がこれに基づき評価したり、学校運営を決めたりするため、教職員集団でささえあい学校を運営する関係も薄れ、教育現場に競争原 理が持ち込まれています。
 初任者はじめ若手の教員は、学校を離れての研修やレポートの提出を頻繁に求められ、二〇~三〇代の教員で特に勤務時間が長くなっています(図2)。以前に比べ、教員同士の自主的な研究会や、保護者や地域との教育懇談会なども開かれなくなっています。
 小峰さんは、「親たちの働き方が厳しくなり、家庭訪問や面談の時間が取れないことも多くなりました。子どもたちと向き合うことが今こそ必要なのに、その 時間がとれず、伸びゆく子どもたちを応援したいというやりがいすら感じられなくなっています」と話しています。(丸山聡子記者)

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(民医連新聞 第1532号 2012年9月17日)