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民医連新聞

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「財源が厳しいからと、負担増をあきらめる前に読むハナシ (4)消費税は「ゼロ」で良い

 財政問題に詳しい税理士・富山泰一さんが国家財政や「負担の公平」について語る最終回。

 日本の財政危機はつくられた、と前回お話ししました。財界や政府がすすめる消費税増税中心の税制改革では、少数の金持ちが富む一方、庶民はますます困窮する二極化に拍車をかけてしまいます。
 表1は、所得の分配と再分配が一九八七年の消費税導入後 からどう変わったかを示しています。左のジニ係数は、ゼロに近いほど平等で、〇・〇一でも大きな違いを持つ数字です。右側は租税負担・社会保障負担の推移 ですが、九〇年と〇五年を比較すると、租税負担率は四・五%も減りました。この期間に行われた税制改革は、個人課税や法人課税の最高税率・基本税率の引き 下げ、租税特別措置の温存や拡大といった金持ち減税ばかりで、その分を消費税が下支えしています。
 一方、社会保障負担率は伸び、租税収入減と差し引きゼロ、税金から社会保障負担への付け替え現象が起きています。社会保障負担は、高収入者も一定の額で 頭打ちですから(たとえば国保料の最高額は年七七万円で年収一〇億の人もそれ以上払わない)、金持ちの負担が減り、中低所得階層の負担増で帳尻あわせする 構図がここにもある。ジニ係数が上がる(=再分配の不平等が悪化)わけです。

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解決は難しくない

 解決方法は、難しくありません。税財政の仕組みを消費税導入前に戻せば、確実に改善します。そもそも税金は消費税を除き、払う能力があるところから取 り、儲けがなければ払わなくていいというものです。例外の消費税も、大半は戦費を得るため生まれた「補完税」で、贅沢な消費にかけていました。それがい ま、生活必需品にまで課税する一般消費税として導入されているわけです。これは税制原則にある「最低生活費非課税」にも反していて、本来なら「消費税以外 の税金を取りきって、もう取るところがない」という局面でやむなく行う究極の課税といっていい。高収益企業や大資産家、高額所得者に大減税している時に課 す税金ではないのです。

取り戻せてお釣りがくる

 高額所得者の減税額をご存知ですか。確定申告義務のある課税所得二〇〇〇万円以上の人は二二万五二四三人で、消費税導入前の税法と比較して二兆二二五〇 億円の減税です(〇九年度)。トヨタの元社長の奥田氏もこの中の一人です。彼の報酬は年間約一億四〇〇〇万円で、減税は約五〇〇〇万円。こういう人が税制 や財政を検討するメンバーなのですから、消費税一〇〇%でも、所得税の控除額がゼロでも痛くも痒くもない。
 表2は、この高額所得者の減税額で何ができるかを試算しました。子どもと高齢者の医療費無料化、後期高齢者医療制度の廃止、介護保険料・利用料の減免など、小泉構造改革時代に改悪された分をすべて取り返すことができ、そのうえお釣りがくる計算です。
 ほか、輸出大企業への莫大な消費税還付や富裕税の創設、軍事費や政党助成金の廃止など歳入・歳出の見直しのポイントも多数あります。財源探しは「難し い」のではなく「探そうとしない」政治家と御用学者がいて、財源があることを承知で国民に隠しているのです。マスメディアの流す情報も彼らに荷担する内容 です。
 「正しい情報」を広める努力が多くの識者に求められています。その輪を広げ、真の「国民の生活第一」の政治を実現させることが、被災地をはじめ、日本の再生につながるのです。(連載おわり)

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 富山泰一さん 不公平な税制をただす会代表幹事、日本租税理論学会、現代税法研究会会員。主な著書に『庶民増税によらない社会保障充実と震災復興への道』『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』など

(民医連新聞 第1532号 2012年9月17日)