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民医連新聞

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福島への連帯支援がはじまって わたり病院 遠藤剛院長にきく

 東京電力福島第一原発の事故の影響を受ける福島。県外への避難者はいまも六万人を超え、それは医療従事者も例外ではありません。 全日本民医連は福島県民医連からの要請を受け「福島連帯支援委員会」を発足。医師や看護師支援の強化、薬剤師やリハの支援を行っています。医師支援の本格 スタートと同時に七月一日からわたり病院(福島医療生協)の院長に就任した遠藤剛医師にききました。

■先の見えない苦しさ

 わたり病院が建つ地域は福島市内でも空間線量の高い地域です。現在二マイクロシーベルト (毎時)にはなりませんが、除染もすすまず、小さな子どもを抱えた世帯を中心に、地域でもかなりの部分が避難しています。若い世代を中心に、放射能による 晩発性障害を心配する向きも。「子どもは産めないかもしれない」と悩む中・高生もいます。
 また福島市内には、被害がさらに深刻な地域から大勢の人たちが避難して仮設住宅で暮らしており、孤立死や、震災前からの持病の治療に通える医療機関が管内にないなどの健康問題も抱えておられます。
 三・一一以降、私たちが直面してきた困難は、なんといっても放射能によるものでした。医師や看護師がやめ、患者さんたちが地域を出て、研修医さえ来なく なる…という事態が地域で起き、私たちの病院も例外ではありませんでした。
 「被災地の病院として、何が求められているのか」と、三・一一から議論してきたつもりでしたが、研修医がいなくなると、体制の厳しさも手伝い、団結は難 しくなりました。被災前から内科医が減っていたことや、県連全体の課題でもある後継者養成も順調ではなく、「うちの病院は、この地でこの先五年、一〇年と 続けていけるのだろうか」―という息の詰まるような日々でした。

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■もらった支援の意味

 そんな中、全日本民医連の前副会長・大山美宏先生に四月から三カ月間の支援をいただきました。医師集団や医学生担当だけでなく、他部署の職員とも話しこみ、改善点はどこか、知恵を出してくれました。
 こんな「後押し」のおかげで、医師たちは医長などの新たな任務を引き受け、集団的な医療活動を実践する体制がつくられつつあります。好影響は他職種に も。「『患者さんを社会的視点でとらえよう』と民医連がいうのは、こういうことか―」と、支援の医師の提案で開いたカンファレンスに参加した看護師からこ んな声も出ています。
 支援の方々は、民医連職員としてもピカ一です。支援者は単なる「労働力」ではなく、民医連を学ぶ貴重な機会であり、皆の力になっています。私たちは、得していると思います。

■これから

 第六次医療構想の基本方針も定め((1)放射線被災地における健診活動・健康増進活動の飛 躍的強化、(2)地域に暮らし続けるための在宅医療の展開と、介護・すまいのネットワークの形成、(3)上記二つの目的をささえる病院医療の整備・強 化)、特に病棟再編は建物の増改築を待たずに来年度に行います。事務系の支援もあり、これらの実現には欠かせない経営についての助言ももらっています。
 来年度は研修医が来ることになりました。病院全体で喜んでいます。地域の医療を担う医師を育てることが、わたり病院に求められている最大の課題ですから、研修医が「来て良かった」と思えるような研修制度の改善も行います。
 支援を受け、当面の目標は定まりました。これを実現してゆく作業はこれからです。福島県民医連全体を視野に入れれば、今後とりくまねばならない課題は山積ですが、まず「人づくり」ができる体制をつくるところから始めています。

***

 民医連の会議に出て、私がわたり病院の院長だと分かると、温かい声がかかります。全国から 届く野菜などの食材も、本当にありがたいのです。着実に問題を克服する。目標を「絵に描いた餅」にせず実現する。これが仲間の支援への私たちからのお礼だ と考えています。(木下直子記者)


 ※全日本民医連は連帯支援の目的に次の四点をかかげる。(1)核害に立ち向かう民医連の事 業所への支援、(2)そこで奮闘する職員への支援連帯、(3)わたり病院が引き続き臨床研修病院としての役割を果たすことができ、地域医療を守る病院とし て存続発展すること、(4)とりくみを通じて県連機能を強化する

(民医連新聞 第1532号 2012年9月17日)